数奇な運命に翻弄され、時代を強く生き抜いた一人の男、それは・・・
オリジナル小説を書いています。 宜しければちょっと立ち寄ってみて下さい。
更新できそうですね。 小説の続きを更新します。但し、ある日突然終了する事を予測して、 どこまで続けられるか、それまで更新したいと思います。 お付き合いの程、宜しくお願いします。 これまでのあらすじ アトラテックで軍人を生業としてい...
お知らせ: 今後、小説サイト「エブリスタ」にて連載を予定して いますので、そちらでの観覧をお願いたします。
「大陸の守護神という者はその殆どが大陸神が産み出した生命体。言って みれば守護神は大陸神の子供と言っても過言ではない生命体なのです。 守護神ルラルバンは私が生み出した神。そしてそのルラルバンの子で あるあなたは、私の存在を胎内に取り込んでい...
「美しい方ですね。」 ふと見ると、ジルカメスが少女を見たまま固まっている。「おーい。」 「・・・まさか、一目惚れってやつ?。」「うるさい!!。」 ジルカメスは顔を真っ赤にして否定した。が、どう見ても彼の目は恋 しているように見える。 「あな...
「そんな事は必要はない。今言った通りやり残した事があるから戻って きたまで。あんたらの事情とやらに関わるつもりはない。」 「しかし・・・。」 ユーリウスはシュメールから顔を背けた。 「・・・大陸神エイジャン。聞こえるか?。」「何でしょうか?...
「いいえ、そうではありません。勇者ロナウハイドよ。私が間違って いました。私は自分の存在が消えてしまう事を恐れていました。けど、 あなたの仰る通り自分の大陸の事は自分で解決するべきだと。そして あなたの勇気を見て思ったのです。あなたの中にあ...
「ゆ・・・ゆる、せぬ・・・。き、貴様ら・・・皆殺しに・・・。 この、私が・・・人間如きに・・・。」 「・・・それって、人間を自分より下に見ていたって訳か。俺に 言わせりゃ、人質を取って無理矢理いう事を聞かせる者の方が人間 以下だと思うがな。...
ジルカメスはガネーティアと互角に剣を交わす。ユーリウスは彼女の 後ろに回り、ジルカメスを援護する。 「・・・ただの人間のくせにここまで戦えるとは・・・。これは面白く なってきたな。」 ガネーティアは神獣に姿を変えた。 ユーリウスは鼻で攻撃さ...
「丁度よかった・・・。話があるんだ。」 ジルカメスが話し掛けると、フンヴォンは忙しそうにして 「悪いけど急いでいるから。」 と、そっ気なく答え、その場を立ち去ろうとした。 「待てよ・・・。」 フンヴォンは何か訳があるらしく、話をしようとする...
「怪鳥マヤウ・・・か。」 もしあの鳥をうまく利用できれば天巖山脈まで戻ることも可能かも しれない。マヤウを操っていると思われる、フンヴォンとかいう少年に 頼み込めば何とかなるんじゃないのか、と。そんな期待を胸に、 ジルカメスに着いて回った。...
「もう話すことは無い。」 「そうじゃない。・・・ロナウハイド殿。君の事は諦める。だが、一つ 約束して欲しい事がある。このエイジャン大陸のどの国にも協力しない というのならばな。」「そうだ。」 「だとすれば、エイジャンの国々にもし争い事が起こ...
「マヤウ!!。旋回して降下しろ!!。」 フンヴォンが怪鳥マヤウに命令を下す。 「ブラウマン王国か・・・。」 やがて、怪鳥マヤウは宮殿の中庭と思われる場所に着地した。 ユーリウス達三人と、フンヴォン、そしてガネーティアが降り立った。 「・・...
ランムラビから、自分達を連れて来た大きな鳥だった。 「こいつが操っていたのか・・・。」 ユーリウスはフンヴォンの方をちらりと見た。 ガネーティアは再び人間の、女性の姿になった。そして大きな鳥の 上に飛び乗った。「さあ、そなた達も急げ!!。」...
「俺にとっちゃ、待ってましたの流れだな。」 「余裕あるのかよ。たいしたもんだぜ。」 ジルカメスも兵士から剣を奪い、構えた。 「オルケルタさんよぉ。俺達から離れるなよ。」 「それを言うのは俺の役目だっつうの!!。」 ユーリウスとジルカメスはオ...
「王。こちらがユーラントの勇者ロナウハイド殿。それとお連れの 方です。」 「おお、ようこそ。我が王宮へ。私の名はアン・ズィオン・ブゥオン (安陽王)。このフンダイ王国を統べる者。やはり祈祷師が言っていたが、 ユーラントの勇者ロナウハイドが...
「こいつ・・・使えるかもしれねえ。」「なんだそりゃ・・・。」 ジルカメスは木切れを両手で包み祈った。そして掲げると不思議な 光が鳥を包み込んだ。光が消えると傷が癒えたのか、鳥は大きく 鳴いた。 「頼む、俺達をこの密林から出してくれ。」 ユー...
「・・・また反対方向かよ・・・。このままじゃ世界を一周し そうだ。」 「ここって一体・・・、何処?。」 「俺に聞くな!!。知ってる訳きゃねーだろ。」 「いや、そんな事じゃなく、何か目印になるもんないか なって・・・。」 「例えば・・・?。山...
密林地帯を抜けると果てしなく広がる草原地帯へと出た。 「ここはチェルノーゼムといわれる地帯。平らで乾燥した地が 広がる。」 オルケルタは少し不安になった。山も川も無い、こんな所で迷子に でもなったらユーラントへ戻る事はできるのか?。 しか...
「あ・・・もしかしてカンチガイしてない?。『奴隷』って言うのは 『身分』とか『階級』とかの事で、そういう生き物、とかじゃ ないんだ。」 「あ・・・そうなのですか。だからあの時・・・。」 オルケルタはジルカメスが自分の事を「人間だ。」と言った...
ユーリウスとオルケルタはチャリオットと呼ばれる馬車に乗せられた。 その馬車を王の命令でジルカメスが操作する。もともと戦闘用に造られた 馬車とかで乗り心地は悪い。ユーリウスはますます具合が悪くなりそう だと感じた。 塔から出ると太陽は昇り始...
「ここは嘗て小さな王国があった場所。それが隣国に滅ぼされ滅亡した。 守護神もいたのだが、呪いを掛けられ滅ぼされた。ここにはその守護神の 亡霊が染み付いてるみたいで、この国を侵略した者達はここを酷く忌み 嫌っていた。その霊障が異大陸のロナウハ...
自分の腕を掴んだ手。その手も皮膚のざらざらした感覚を感じる。 宝玉を渡した手の持ち主とは明らかに違うのに、その者からも焦げ 臭い体臭が漂う。「あなたは一体・・・?。」 しかし、その者はオルケルタの質問には答えず、オルケルタを 引っ張りなが...
オルケルタは扉を開けた。見たこともない男が部屋に入ってきた。 その男は頭から布を被り、顔はよく見えないが、何処となく焦げ 臭いような体臭を漂わせている。 「・・・何でしょう?」 「そなたに頼みがある。聞いては頂けないか?。」 伸ばした手は火...
ユーリウスは小さな声で呟く。 「その・・・噂とやらの出どころは、分かって・・・?。 「勇者様、質問はお二つだけではありませんでしたか?。」 その答えにユーリウスはむっとして言葉を噤んだ。 暫く歩くとなんとなく胸元がすっきりしない。頭痛もす...
「所詮は王が所有している『奴隷』。人間としての価値すらない。」 「ど、ド、レイ?。何だそりゃ?。」 「言ってみれば人の形をし、言葉を喋る事ができる『道具』。庇う必用 すらないかと。」 「・・・酷え事平気で言うんだな。」 「そのような輩に拘っ...
ユーリウスは下を見下ろした。どうにかしてこの場から逃げ出したい ところだが、空の上ではどうしようもない。足もとが落ち着く場所に 着いたら、何か逃げ出す方法を考えるより他にないだろう。 ただ、そこから逃げ出せたとして、天巖山脈までどうやって...
ユーリウスはオルケルタを抱えたままその生き物に飛び乗った。 ジルカメスも元の姿に戻り、飛び乗った。 「・・・こいつは、何だ?。」 「ランムラビ王国の守護神シュメールが使わした龍、ウシュルガルだ。 こいつは凄いぞ。一瞬で千の山と千の大河を越...
兵士が集団で襲ってくる。ユーリウスは一人の兵士に襲い掛かり槍を 奪った。それから今度は剣を持った兵士に襲い掛かって、今度は剣を 奪った。 「こいつは貰った。山賊の剣は家に置いて来ちゃったからな。」 そう言って兵士を蹴り飛ばす。 「どっちかっ...
しかし、ユーリウスの方が一足早く、廊下を走り出した。 「・・・な・・・。」 「そうはさせん!!。」 ユーリウスは巧みにハットゥシャの攻撃を交わしながら、中庭に行こうと する、が、 二階で行き止まりに突き当たってしまった。「・・・残念だったな...
ユーリウスは深く頷くとジルカメスの方を見た。 「オルケルタの事。宜しく頼むぞ。」「分かった。」 ユーリウスはジルカメスに顔を近づけて脅すように言った。 「・・・手ェ出したらてめえを滅ぼす。いいな。」 「分かった分かった。・・・そんなに怖い顔...
主な登場人物 ーユーリウス・ロナウハイド・ヴォルフガング (Julius・Ronauheido・Wolfgang)ー プロフィール 身長・・・67.71 binti(172cm) 体重・・・2063.527onz(58.5kg) ...
だが、もしユーリウスの思った通り、ハットゥシャによって 精神的に追い詰められているのであれば、罠かもしれないのを承知で、 ジルカメスの「助ける」という言葉を信じ、行動しなければ事は進まない。 このままではここに閉じ込められたまま時間ばか...
少しずつ日は落ちてゆく。ジルカメスが気を利かせて身を隠した ようだが、ユーリウスもオルケルタも、今の状況ではそういう 場合ではないと思っていた。 「私達をいつまでここに閉じ込めて置くつもりなのでしょうか。」 「そうだな・・・。」 ユーリ...
「話せば長くなるが・・・俺のいる国ランムラビにある『ハビロの塔』 ってのがあって、そこに住んでいる守護神シュメールの千里眼が教えて くれた。『ユーラントの勇者がヒルタイト王の陰謀によって捕らえ られている』って。守護神も王も異国に来るのは不...
「昼間のうちに行動すれば目立ってしまう。夜になるのを待とう。 その間、ここで時間を潰すしかないな。」 「夜・・・か。」 「俺は隠れててやるからあんた達は二人で宜しくやってたら・・・。」 そう言われて、ユーリウス固まってしまった。 「俺の頭の...
結界はすぐに戻った。そうしているうちに鳥は部屋中をぐるぐる 飛び回り、オルケルタの寝ている寝台へ近づく。 「虫がいる。退治して。」頭の中にそんな声がした。「虫・・・?。」 そう言えば、この部屋に入ったときから数匹の虫が飛んでいたが、 何も害...
「馬鹿な事を!!。」 いきなり現れたハットゥシャがユーリウスに手を翳そうとした。 「そうはいくか。」 ユーリウスはその場から離れようとした、が、ハットゥシャは急に 手首を押さえ、苦しみだした。 「な・・・ただの人間が・・・一体何を。」 ユー...
「ベリーダンスだ。・・・実はこの娘達は私の娘でな。自慢の娘達だ。」 そう言われて数えてみると八人もいる。八人も娘がいるのか・・・。 子沢山なのか?。王は、包帯を巻いた手を見せて言った。 「先ほどのそなたの行為。本来であれば許しがたい行為だが...
突然、ドアをノックする音が聞こえる。「・・・誰だ?。」 ドアを開けずに部屋に入ってきたのはハットゥシャだ。 「如何ですか?私達が用意した部屋は・・・。お気に召していただけ ましたか?。」 「汚ねえやり方でなければ快適かも知れないがな。こんな...
ユーリウスは首が締め付けられる感覚に陥る。息が苦しい。 ぜいぜいと喘鳴を上げるユーリウスにオルケルタが必死に庇おうと している。オルケルタに助けられる訳にはいかない。「くそっ。」 と言ったつもりだが声も出ない。「やめて!!。」 オルケルタが...
「如何ですかな。悪い話ではないと思いま・・・。」 「断る!!。」 「なんと・・・。では仕方ありませんね。」 王が合図をするとハットゥシャが王の後ろから現れた。 ユーリウスはオルケルタを引きずられないように必死に庇うが、 オルケルタを押さえて...
なんとかオルケルタの腕を引いた時にはユーリウスは既に ハットゥシャの転送魔法によって別の場所へ連れて来られていた。 ユーリウスは辺りを見回す。「ここは・・・城?。」 変わった形の、城のような場所に来ていた。 「ここはヒルタイトの宮殿。その...
「その通りです。」 「残念だが、知っての通り俺はユーラントの勇者だ。自分が守る べき大陸でさえ精一杯なのに、正直、他の大陸には構っていられ ないのが現状。助けてやりたい気持ちはあるが、自分の大陸の事は 自分達で解決してもらえないかって事だ...
「大陸神エイジャンがそなた達と会いたいといっている。会って みるか。」 「更に異国の神、か。行ってみるか。オルケルタはどうする。」 「御一緒します。」 「そういう事だ。頼んでいいか?。」 「分かった、では山を降りるぞ。」 サガルマータは再び...
二人は大地に祈りを捧げ早速出発する事にした。サガルマータは 急に光を帯びて別の生き物のような形へと変化した。 「さあ、二人共乗るがいい。」 二人は翼を広げたサガルマータの背に乗った。サガルマータは一気に 上昇し、デヴギリ山の山頂へと辿り...
「たった今越えてきたところだ。」 「転送魔法ってやつか・・・。ところで神様って皆そんな魔法を 使えるのか?。」 「私が知る限りでは、使えぬ者の事は聞いた事は無い。だが、逆に アトラテックの大陸神ティマイオスはかなり強い魔力を使いこなせた よ...
「今それを持っている者はいない。実はティマイオスは二十数年前例の 『未来人』が現れた時にその者たちに渡していたようだ。」 「何故!!。・・・」 「恐らく、巨大惑星の接近から、このエーアデを回避する為だろう。」 「待てよ・・・本物には物凄いエ...
〜エイジャン編その1〜 「ここが・・・。」「・・・砂だらけ・・・ですね。」「うん。」 「ここがユーラント大陸の東の端だ。そしてそこに見えるのが ウドヒ砂漠だ。」 「サ、バク?。・・・こんな辺ぴな所にも神様はいるんだ。」 「そうだ、だが、私...
「いいか、オルケルタは俺に喋りたくなる喋りたくなる喋りたくなる喋り たくなる。」 そう言って人差し指をオルケルタの目の前でくるくる回して見せた。 「ん、もうっ、分かりましたっ。だったら笑わないで下さいね。 約束ですよ。」 「分かった。約束す...
ある夜、ユーリウスは火照った身体を冷ましながらベッドに横たわって いた。彼の腕の中には余韻に浸っているオルケルタが。ユーリウスは彼女の 髪の毛を自分の指先に巻きつけながら幸せを噛み締めている。その時 さあっと雲が晴れ、夜空を埋め尽くす程の...
「俺さあ・・・今最高に幸せだ。こうしてオルケルタと一緒にいられるん だから。」「私も・・・。」 ユーリウスは体の一部が変化していくのを感じた。元気だな、と感じつつ 気にしない振りをした。「あーっ!!・・・う、うっそぉ。」 「ど、どうしたので...
アトラテックにも保養施設の役割として温泉は存在した。しかし、ああいう のは小金のある人物が大枚を払っていく場所、といイメージが強く、 ユーリウスも過去に一度か二度利用した程度だった。 「温泉なんて久しぶりだな。」「そうなのですか。」 「親父...
二人は再び口付けを交わした。また気持ちが高ぶってくる。ユーリウスは 指先で彼女の髪の毛を掻き上げる。そっと耳元にキスをする。次は瞼に。 指先が彼女の首筋から胸元へと降りていく。オルケルタの白い肌が ユーリウスの欲望を掻き立てる。。やがて二人...
女の子と口づけを交わしたことは幾度かあったが、ここまで胸のときめきを 抑え切れない程熱い思いを感じたのはオルケルタだけだ。息が荒くなるのを 必死で押さえながら、彼女の気持ちが高ぶるのを待つ。 静かに唇を離し、逸る気持ちを押さえた。そしてもう...
「神の御前で新たな夫婦が誕生いたしました。神よ。二人の為に祝福を お授け下さい。」 ツェペリの言葉を受け、ユーラントは両手を掲げた。 「ここに新たな夫婦の誕生を認めた。如何なる時もこの夫婦に災いが 降りかからぬよう、祝福の言葉を授けよう。」...
式の準備をする間、ユーリウスは先程ユーラントが話してくれた父の 過去を思い出していた。父と母が出会い、恋に堕ちたのが惑星エーアデが 決めた運命だったと言うのなら、惑星エーアデは自分の誕生を望んでいた。 二つの大陸の血を持ち尚且つ強い生命力...
「幾ら強い生命力があったとして、アトラテックの者は所詮はアトラ テックの者。私の転送魔法は効かない。それを知ったティマイオスは 何も言わなかったな。そして同時に私も知った。アトラテックも ティマイオスももう残された時間は僅かだと。そしてそれ...
「・・・もう二十数年前、ティマイオスから『訳はいえぬが魔力に 耐える事の出来る人間を派遣して欲しい。』そう依頼された。以前から 私はこの地を彷徨う遊牧民の、『神童』と呼ばれていた少年に目を けていて、人間でありながら不思議な程感が働き、頭の...
「お邪魔するよ!!。」 その声に反射的に二人は離れた。いつの間にか集落の中年女性連中が家の 中に入ってきていたのだった。 「ななななななな・・・何、何か、用ですか?。」 ユーリウスはあせりながら尋ねた。 「オルケルタに教えなければいけないと...
オルケルタは暫く黙っていたが、 「そのお話は長老様から聞いています。ロナウハイド様がそういう運命の 元に生まれた方である事を。私もその話を聞いて胸が苦しくなって・・・。けど、可哀想とかそんな同情の言葉ではなくて、あなたが生まれてきた 意味を...
仕方が無い。明日一番で相談してみるか。そう思い、もう一度横に なった。 翌朝、ユーリウスはゲルマンに相談する。 「それは私も考えてみた。それも含めて長老に相談するか。」 その日から集落は大忙しだ。ユーリウスとオルケルタの結婚式へ 向けて...
ユーリウスはゲルマンと長老の幕舎まで二人を送っていった。 オルケルタは別れを惜しむかのようにユーリウスを見つめている。 ユーリウスはオルケルタの腰に手を回す。このままぐっと抱き締めたい 衝動に駆られるが、まずはオルケルタがその気になるのを待...
「お前も幸せ者だな。私もお前の母さんと恋に堕ちた時もそんな 顔をしていたのだろうかな?。」 ユーリウスは何の事かさっぱり分からず、ただ茫然と父親の顔を見上げて いる。。 「彼女にプロポーズしなくていいのかと聞いている。このままだと オルケル...
「ゲルマン殿。オルケルタがここまで言うのだから二人の仲を認めて やって欲しい。オルケルタには、好きでもない男と一緒にさせるのは 余りにも可哀想だ。」 二人の仲って・・・やはりオルケルタには心に決めた人物がいると 言う事か。ユーリウスはこのま...
その日以来、ユーリウスは何をしても上の空だった。オルケルタの 心の中には、自分とは違う人物がいるかもしれないと思うだけで胸が 張り裂けそうになる。思いをぶつけていないまま失恋と呼ぶかどうかは 分からないが、今のユーリウスにとってはそんな...
祭りも終わり、皆幕舎に戻っていく。一度はベッドに腰掛けたものの、 何だか今夜は眠れそうにもない。仕方がないので外に出ると美しい星空が ユーリウスを迎える。吸い込まれそうな星空の下、ユーリウスは今までの 事に思いを馳せる。 やはり頭の中に思...
収穫の季節がやってきた。毎年この頃になるとやってくる遊牧民が 居るという。その遊牧民が持ってくる貴重な「塩」をここの集落で収穫 した保存食と交換する。始めて見る遊牧民の人々は不思議な衣装に身を 包み、屈強な男達が何人も居た。 「塩」が目当て...
静かに顔を離すとオルケルタは俯く。ユーリウスはオルケルタの瞳に自分が 映らなくなった瞬間、胸が苦しくなる感覚を覚えた。 「・・・オルケルタ・・・。」 このままオルケルタを見つめていたい。そして時が止まればいい。そう 考えていたが、このままで...
「あ・・・え、何だ?。」 「足元が見えにくいので気を付けて下さいね。」 「ああ、うん。分かった。」 「ええと、どんなのを取ればいいんだ?。」 そう聞かれて、オルケルタは辺りを探した。木を見上げ、手を伸ばした。 ぶちっと音を立てた。彼女の掌に...
「ええ、本当はオオカミだけでなく、森には要注意な生き物が沢山います。オオカミ程ではないですが、キツネやイノシシなど怖い動物は沢山 います。」 「コヨ−テとか?。」「コ・・・何ですか?。」 「コユーテは居ないのか・・・ふうん。じゃあ、魔法の生...
「『独占』・・・どういう事なんだろう。」 軍を退役してからも身体は鍛えてはいた。ムキムキマッチョではない ものの、それなりに筋肉は付いており、腹筋も割れてて、見栄えは いい方だと密かに思っている。 「女の子達が興奮していたって事は、『かっこ...
「・・・あらあ、確かにいい体してるわね。ケイテとゾフィが噂 してたわよ。女の子達が興奮して話していただけの事はあるわねえ。」 そう言いつつユーリウスの胸板を軽く叩く。 「えっ・・・。」 もうそんなに目撃情報が広まっていたのか。ユーリウスは何...
「こら、おとなしくしてろ。」 ユーリウスは胴体を押さえ、小屋の奥の方へと離した、がその瞬間、 アヒルの最後の攻撃を喰らってしまった。「んげっ!!。」 ユーリウスのシャツにべっとりとアヒルの糞が付着している。 「ああっ!!、ちっくしょ!!。や...
暫くすると体が元に戻ったようだ。それにしてもオルケルタには何故か 勝手に身体が反応してしまう。昔、女の子と付き合った時はここま でではなかった。その為か、当時はクールでストイックな男だと思われて いたようだ。 やはりオルケルタは今まで付き...
「 い、い、い、いや・・・いいい。こ、こうしてるとすぐに直ると思う、 から・・・。まず、そいつを小屋に・・・。」「あ・・・そうでした。」 オルケルタが小屋に向かったのを確認し、辺りを見回しながら立ち 上がった。 身体の一部はまだ変化したまま...
一羽のアヒルがオルケルタのスカートの真下を通り過ぎる。それを 目の当たりにしたユーリウスはドキッとした。 「い、いや、こんな時に・・・。」 邪念を捨て、とにかくアヒルを捕まえる事だけに集中した。 一羽、また一羽と捕まえるが、最後の一羽だけ...
アヒルの小屋が壊れかかっている。ユーリウスを始め、集落の者達が 集まって小屋の修理に掛かる。空いているスペースに急ごしらえの柵を建て、 その中に一時的にアヒルを一羽ずつ移す。「逃げられんようにな。」 何とか全羽を柵の方に移した。「お前ら、ち...
「ええ、割と・・・。それよりも私はチヘンネ様の名前の方が 珍しいと・・・。」 「そうかあ。俺に言わせればその辺によくいる名前だと思った けどなあ。ついでに言うと親父はアトラテックでは『チリカワ』って 名乗っていた。」 「『チリ・カワ!?。』...
「皆の者、ここで喜んではいけない。この地にはこうして勇者ロナウ ハイド様がいたからこそ山賊を追い払う事ができた。だが、居ない時は どうなる。いつまでもロナウハイド様を頼ってばかりではだめだ。 一人一人が皆集落を守る覚悟が必要だ。そうであろう...
「いっ・・・痛ってえ・・・なんだ、こいつ。」 山賊は頭に血が上ったらしく、ユーリウスを捕まえようとした。その間を 余裕ですり抜ける。その時別の山賊から縄が投げられた。 「おっと・・・。」 それを交わす。 「こ、こいつ・・・後ろにも目がついて...
「私が農業指導を行ったが故、皆効率よく作物の収穫が出来るんだ。 天体に浮かぶ星や太陽の向きが季節を彩り、その季節によってどう作物を 作り、育てるか。そしてその季節に逢った作物を育てる事によって効率 よく食べ物が手に入る事をな。」 「・・・ふ...
その夜、ユーリウスはなかなか寝付けなかった。正直、オルケルタに そんな事情があった事や、そういう相手と結婚しなければならないと いうのもショックだった。ただオルケルタはまだ十五歳。ひょっとしたら まだ「恋」というのも知らない年頃かもしれな...
「・・・何か?。」 「お前、オルケルタと何があった?。」「何も無いけど?。」「本当か!?。」 「・・・うん、まあ。」 「オルケルタ・・・泣いていたように見えたが。」 「いや、別に何も無いけど。」 「その言葉、信じていいのか?。」 「ちょっと...
「そいつに触るな!!。」 そこにはばらばらに分解した銃があった。突然の大声に驚いたのか オルケルタはその場に立ち尽くし、声も出ない。 「あ・・・いや、ごめん・・・そいつ、危ないものだから・・・。」 暴発するかもしれない、と言っても分からない...
ちょっと時間が空いたので、銃の手入れをする。出来る限り使わない ようにするにしても手入れは必用だ。両親は長老に用事があって幕舎には ユーリウス一人だ。 「あのう・・・。」誰か来たようだ。「はい・・・。」 そこには何とオルケルタが居た。 「新...
「いや、きちんと説明していいんじゃないのか?。」 「いい訳ないだろう。この世界に存在しないものは持ち込んではいけない。 それが自然の摂理だ。そしてこの世界の掟だ。」 ユーリウスは黙っている。「おーい・・・。」 集落の男達が集まってきた。「な...
ユーリウスはすかさずナイフを投げ、オオカミの口からのどの奥を突き 刺した。小屋の中の山羊を襲っていた何匹かのオオカミは恐れをなして 逃げていった。 オイルランプの明かりで、被害状況を確認する。目を覆う光景に流石の ユーリウスもなんとなく胸...
馬は少し歩き始めた。そしてホルケの側まで来た時にもう一度引くと、 馬は歩くのをやめた。 「・・・凄いな。初めてて一ぺんに馬を乗りこなせたのはあんたが 初めてだ。『勇者様』の肩書きは伊達ではないってコトだな。」 「・・・いや、そこ『勇者様』関...
「・・・仕方ない・・・。」 思い切ってユーリウスは起き上がり、両親に気づかれないようにこっそりと 外へ出た。 「そう言えば、この家、鍵も掛けない・・・、いや、鍵も掛けられ ないのか。」 空には満天の星が広がる。吸い込まれそうな夜空を見てい...
やがて辺りは暗くなり、ユーリウスは約束どおり長老の家へ行こうと 外へ出た。 「・・・凄え・・・。」 空には今まで見たこともないような満天の星空が広がっている。 「・・・これが無数の星空・・・。親父の言っていた事は嘘じゃ なかったんだ。」 美...
「夜になったら長老がお前を皆に紹介したいそうだ。夕方には家に 戻っているようにな。」「家って・・・?。」 「あ、すまんすまん。まだ家を紹介していなかった。そうか、 オルケルタは分かるはずだから案内してもらってくれ。・・・いいかな、 オルケル...
「これ。」 オルケルタは集落の外れにある木の実をもいだ。親指ぐらいの大きさの 粒が二十個位くっついている。オルケルタはそこから一粒もぎ取り、 ユーリウスに渡す。触るとぐにゃっとして変な感触だ。 「お口に入れてみて下さいな。」「食えるのか?。...
ユーリウスはオルケルタの案内で集落を見て回る事にした。透き通るような 白い肌と宝石のような碧い瞳がユーリウスの心に焼きついて離れない。 ユーリウスは彼女に見とれっぱなしで、何も頭に入らなかった・・・訳では なかった。何故か彼女を見てると心...
「ええ、ああ・・・なっなっなな、なんだ?。」 「集落を案内する。来なさい。」「ああ、・・・んん。」 ユーリウスは皆の後を追いかけた。 「・・・けど、よかった。皆がいなくなっていたらどうしようかと思って いたからな。オルケルタの事もあるし、長...
恋とは無縁の、そんな自分が未来の花嫁を見つけられるのか、 子孫を残すことが出来るのか、ユーリウスは心なしか不安になった。 身体の事は両親には言えないでいたし、自分の身体に欠陥があるかも しれないという事を認めるのも嫌だった。それだけではな...
「分からぬか。それはお前がこの地で子孫を残さねばならんという 意味だ。アトラテックでお前の子孫を残す為の相手を連れてこられな かった。だからやり残した事は無いかと聞いたんだ。」 「いや、そんな相手いねえよ。」 「そうか。という事はこのユーラ...
セルデゥスと教皇に別れを告げ、三人は大陸神ユーラントと共に別の 場所へ行く事になった。「何で?。」 「ゲルマンが作った集落へ行く。そこに新しい文明を築く為だ。見ての とおりデルシャは完成している。が、他にも文明を興さなければならん 地が沢...
「親父の故郷・・・。つまりこの大陸からじゃないかって。それで ティマイオスの話だと、アトラテックには『時空転送装置』というのが あって、それでやってきたらしい。」 「『時空・・・転送、装置?』。」 「早い話、タイムマシンみたいな乗り物で、時...
「そうだ。我々は計画を遂行する為、月を破壊し、影を消す事も考えたが、 我々の力では到底叶うはずも無い。仮にそれが可能だったとしても、 せっかく誕生した六つの大陸は月が消えた事によって再び現れるであろう 闇に飲み込まれてしまう。アトラテックの...
神の一体がユーリウスに手を翳した。 「そうか・・・ティマイオスの記憶を持っているのだな。」 大陸神ユーラントは少し考えた。そして掌を上に向けユーリウスの目の 前に突き出した。すると光とともに不思議な宝玉が現れた。 「これ・・・エーアデ儀?。...
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