その当時の私は「花筏」の何たるかを知らなかった。土門拳氏が大型カメラで撮った古刹の山門の扉の名作の影響を受け、35ミリカメラで古刹の山門ばかりを撮り歩いていた時期であった。その合間には古民家や動物、夕暮れ時の街並みの写真も撮っていたが、「花」とそれに関連する被写体には全く目を向けていなかった。その当時は自宅に暗室を持っており、全てモノクロの時代であった。たまにカラーフィルムを買い、街のDPE店にお願いし、サービスサイズだけではなく大きく伸ばすこともあった。而し、色の質は悪い上に料金は非常に高かった。サラリーマンだった私には大変な負担であった。その点白黒写真の場合は大巻きのフィルムを買い、暗室の赤橙を消して手探りで何本ものパトロネ(フィルムをカメラに装着するための缶)に詰めた。それを持って撮影に行けば、フィ...折々の写真&雑感481