日高千湖 さん プロフィール

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日高千湖さん: 夢見月夜曲
ハンドル名日高千湖 さん
ブログタイトル夢見月夜曲
ブログURLhttp://yumemizukiyakyoku.blog.fc2.com/
サイト紹介文日高千湖のオリジナルBL小説ブログです♪『薄き袂に宿る月影』はこちらへ移動しております。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供313回 / 365日(平均6.0回/週) - 参加 2014/02/17 00:03

日高千湖 さんのブログ記事

  • 恋文・60
  •  瀬尾さんは大学に進学してからは、奨学金とバイト代だけで一人暮らしをしているという。「家賃とか生活費、大変じゃないですか?」「まあね。学費だけは父が払ってくれているんだ。家庭教師は時給が良いから、何とかなってる」瀬尾さんは明るく笑いながら、親指と人差し指で丸く輪を作り自分の右の目元にあててみせた。「俺、人気あるんだよ」「そうだと思う」「どうして?」「カ、カッコいいし」僕は誤魔化すようにコーラを飲ん [続きを読む]
  • 恋文・59
  •  熱々だったフライドポテトが急に冷めてしまったような気がした。冷めてしまったのは僕の気分であって、ポテトはまだ温かい。瀬尾さんに全てを見透かされているようで居心地が悪かったのだ。目の前に座っている人はいつもにこやかだ。そして僕には意地悪だ。「そんなの、わかってる」すでに扉は開かれていて、僕はそこから出ようとしている。誰もそれを妨げようとはしていない。だが、僕は首から提げている携帯電話の存在を重く感 [続きを読む]
  • 恋文・58
  •  僕がフライドポテトを食べるのを見ながら、瀬尾さんが独り言のように言った。「幸せそうだね」「えっ」「文ちゃんは幸せそうだね」「そうかな?」どうしたら僕が幸せそうに見えるのだろう?バカみたいにフライドポテトに夢中になっているからだろうか。特に好きな物というわけではないけれど珍しくて、程よい塩加減で美味しくて、ついつい手が止まらなくなってしまったのを反省しながら僕は手を止めた。「羨ましいね」「羨ましい [続きを読む]
  • 恋文・57
  •  立派な門が出迎えてくれる星望学園大学は、有名な私立大学だ。正門から入ると、まず目に入るのは噴水だ。「すごーい!噴水だ」円形の噴水の周囲には四角い石が敷き詰めてあり、大学のキャンパスというよりも庭園のような感じ。いい感じの木陰を作っている木があり、緑が多くて開放的だ。「あっちには図書館と美術館がある」「へえ」図書館と美術館は煉瓦造りでクラッシックなデザインだ。風格のあるどっしりとした感じで、一般の [続きを読む]
  • 恋文・56
  • 「どこに行くの!」「・・・」瀬尾さんは返事もしない。勝手口から外に出た彼は、駅とは反対の方角へと歩いて行く。「瀬尾さんっ!」瀬尾さんは歩みを止める事もなく振り向きもせずに言った。「和」「えっ?」「俺、もう先生じゃないから」「和、くん」「瀬尾さん」でもなく「先生」でもなく、「和くん」と呼ばれてやっと立ち止まった瀬尾さん。振り返ってはくれたが笑顔はなかった。「煩い」瀬尾さんはぶっきらぼうに言うとさっさ [続きを読む]
  • 恋文・55
  •  「困ったな」と言いながらも、瀬尾さんは全く困っていない。彼は微笑みながら腕を組み、足を組んだ。瀬尾さんはお金持ちの家に生まれたのに違いない。セコセコしたところがないし、何よりも立ち居振る舞いに品がある。ただ足を組んだだけなのに、雑誌の中の1ページのように決まっている。「僕の家庭教師でなく他所でやればいいじゃないか?」「ここをクビになったら『S−five』に就職出来なくなるかもしれないじゃないか?」笑 [続きを読む]
  • 恋文・54
  •  忌々しい宿題のプリントをクシャクシャにして、「花子がやった」と言ってみるか?僕の頭はパンクしていた。恭悟の嘘が明白であると確証を得てショックだったというか、ガッカリしたというか。初めての『友人』が意図して与えられた『友人』なのではないかという疑惑が膨らんで、一気に気持ちが下がったというか。そのわりには恭悟を「怖い」とは思っていなかったりする。最近は警棒術の稽古もしてないし・・・。槌屋補佐の睨みを [続きを読む]
  • 恋文・53
  • 「国府田さん!僕、ちょっと駅まで行ってきます!」「えっ?なんだって!?急にどうしたんだい?」国府田さんが驚いた様子で聞き返したが、その理由を説明する暇はなかった。車が行ってしまう。「すみません!すぐに戻りますから!」呆気にとられる国府田さんも、カラーコーンも箒もそのままに、僕は黒い車を追い掛けた。あの車がどこで停まるのか。助手席に座っていたのが本当に恭悟だったのか、確認しないと。 いつもの犬に吠え [続きを読む]
  • 恋文・52
  •  瀬尾先生の宿題はかなりの量だった。彼は本気で僕に出掛ける時間を与える気がなかったようだ。翌日も、午前中の仕事が終わってすぐにプリントに取り掛かった。自分の部屋で集中して1時間半。英語はもう見たくない。このままでは勉強嫌いになってしまうんじゃないか?これでは「家庭教師」は逆効果ではないか?「はあっ」プリントの上の方に所要時間が書いてあって、それよりも5分早く終わるようにタイマーをセットするのだが、 [続きを読む]
  • 恋文・51
  •  柴田さんの言った事が気になってしょうがない。僕が知る「有馬恭悟」は、僕と同じ歳で大学を中退して現在フリーター。 僕は自分が過去を話せないから、恭悟にも彼の過去を詳しく聞こうとはしなかった。実家がどこにあるのか、親はどんな仕事をしているのか、とか。そういう情報を得ようとは思わなかったのだ。恭悟に聞けば、当然自分の事も話さなければならなくなる。それを回避したかったのだ。飯坂さんが言ったように、人が集 [続きを読む]
  • 恋文・50
  •  洋子さんと花子に見送られて、瀬尾さんを駅まで送った。瀬尾さんは「ちゃんと宿題してくださいね」、と言い残して車を降りた。信号で停まってバックミラーでまだ手を振っている瀬尾さんを確認して、僕はちょっと驚いている。「まだいる。もしかして僕がお屋敷に着く頃に電話するのかな?」それはそれでちょっと嬉しくなって、瀬尾さんが気付くかわからないけれど手を振り返した。 恭悟はまだバイト中のはずだ。緊張しながらゆっ [続きを読む]
  • 恋文・49
  •  図書館の駐車場に車を停めた。バックで駐車するのは簡単ではなかったけれど、パニックにならないようにゆっくり、ゆっくり。多分、駐車するだけで5分はかかったと思う。瀬尾さんが「昨日よりも上手くなったんじゃないか?」と褒めてくれた。「そうかな?」昨日よりも上手い、と言われて満更でもない。瀬尾さんは車を降りるとさっさと図書館の方へと歩いて行く。僕は停めた車が真っ直ぐか確認してから瀬尾さんを追い掛けた。 平 [続きを読む]
  • 恋文・48
  •  門を閉める国府田さんを残して僕はガレージを目指した。上り坂で停まったらそのまま後ろに下がってしまうのではないか、と思ってドキドキしながらアクセルを踏む。だが一人で駅まで行って帰ってこられたというだけで、僕の満足感は膨らんでいく。玄関の前で洋子さんが大きく手を振っている。洋子さんは「文ちゃん!」と、僕を呼びながら近付いてきた。窓を開けると「良かったわ!」とホッとしたように微笑んだ。「洋子さん!」「 [続きを読む]
  • 恋文・47
  •  午後から理科を2教科解いて、今日の授業はお終い。採点が終わり全て80点以上だったのでホッとし、帰り支度をする瀬尾さんを見てホッとしている。床にしゃがみ込んでリュックを整理していた瀬尾さんが、僕を見上げて言った。「駅まで送ってよ」「嫌です」「どうして?」「僕は仕事があるんです」「俺がやっておきましたから」「勝手な事をしないでください」瀬尾さんはクスッと笑った。あっ、お礼を言うべき所だった。「それに [続きを読む]
  • 恋文・46
  •  来るなら来い。そんな気持ちで、僕は瀬尾さんを待っていた。電話から約15分。瀬尾さんは約束の時間に遅れることなく、爽やかな笑顔で「おはようございます」と挨拶をした。 午前9時50分、正門のインターフォンが鳴る。「どうぞ」と、洋子さんがロックを解除して僕に言った。「瀬尾先生は遅れるんじゃなかったの?文ちゃん」「走ってきたのかな?」彼の事だ、正門の前で時間を計っていたに違いない。僕からの電話の後に家を [続きを読む]
  • 恋文・45
  • 「じゃあ、ここで」「うーん」改札の前で別れようとしたが、瀬尾さんはなかなか改札を通ろうとはしなかった。手にはSuica。帰る気はあるようだけど、その場から動かない。僕の顔をジッと見ては首を捻る。どうしたんだろう?「どうしたの?」「心配だな」「何が?」「文ちゃんって庇護欲をそそるというか、守ってあげたくなるんだよね」「・・・そうかな?」自分ではしっかりしているつもりなんだけど。敬ちゃんと比べれば、僕はか [続きを読む]
  • 恋文・44
  • 「へえ!星望なの!イケメンで頭も良いなんて、天はニ物を与えるのね」柴田さんは楽しそうだ。この人は基本的にいつもこんななのかな。暗い顔なんか見せない、いつも明るく前向きに、って感じだもんね。まるでミュージカルの主人公のようだ。「ありがとうございます。ですが星望には、更に『金持ち』という要素がプラスされたヤツがゴロゴロいますよ」瀬尾さんはこういう事は言われ慣れているのだと思った。初対面の柴田さんが目を [続きを読む]
  • 恋文・43
  •  鼻先にチュッとキスをして、瀬尾さんが離れていく。一瞬の事に何が起きたのかわからなくてポカンとしてしまい、僕はかなり間の抜けた顔をしていたに違いない。パチパチと瞬きを繰り返す僕に、瀬尾さんは「もう痛くないでしょう?」と聞いた。「へっ?」「おまじない」「おまじない?」「そう。痛いの痛いの飛んでけ、的な」爽やかな笑顔。「おまじない」と言うよりも、呆気にとられた僕は痛みを一瞬でどこかへやってしまった。「 [続きを読む]
  • 恋文・42
  •  予想問題を採点してもらう間は、僕がオモチャで花子と遊んでいる。『家庭教師』というと堅苦しい気がしていた。加々見家に来ていたのはパリッとスーツを着てネクタイを締めた、いかにも『先生』らしい人だったのだ。もちろんその先生は家庭教師としてはプロで、教え方も丁寧で解り易かった。敬ちゃんか僕のどちらかが理解出来ずに遅れているとすぐにフォローしてくれたし、気分に波のある敬ちゃんを上手く宥めて気持ちを切り替え [続きを読む]
  • 恋文・41
  • 「実は社長からは星望学園大を勧めて欲しい、と言われたんだ」「信吾さんからですか?」瀬尾さんは羽根のオモチャを振り回している。花子は体勢を低くして羽根をじっくりと狙い前足を出すが、上手く掴めずに空振りする。それでも何度も果敢に飛び付いていき、コロンと転がる姿が可愛らしいので瀬尾さんも楽しそうだ。「ご両親の意向だ、と聞いたけど」旦那さまたちはまだ、僕を星望学園大に進学させるのを諦めてはいないようだ。「 [続きを読む]
  • 恋文・40
  • 「宿題は書けましたか?」僕は机の椅子に、瀬尾さんはダイニングから運んで来た椅子に座っている。瀬尾さんが猫好きだというので部屋に連れて来た花子は、瀬尾さんを珍しそうに見上げてジッとしていた。丸い目で自分を見上げる花子に、瀬尾さんは目を細めて手を伸ばした。「おいで」花子は特に人見知りというわけではない。お屋敷に出入りする業者さんにもすぐに慣れるし、抱っこされても平気だ。もちろん猫だから、気が向かなけれ [続きを読む]
  • 恋文・39
  •  瀬尾さんは「明日までに、興味がある事を書き出しておく」という宿題を残して帰った。授業は早速、明日からだ。瀬尾さんは性格は明るくて、ハキハキしている。自分に自信があるようだ。有名大学に通うイケメンで、僕から見れば羨ましいようなパーフェクトな人。僕の家庭教師には勿体無いと思うんだけど・・・。「ああっ」濡れた髪をガシガシ拭きながら、僕は頭を抱えた。「痛い」指の曲げ伸ばしの時に手の甲が痛む。普段は「痛む [続きを読む]
  • 恋文・38
  •  「後の事は2人で話し合ってくれ」と言って、信吾さんは帰った。信吾さんは、奥さまが見ておられた履歴書を僕にも見せてくれた。星望学園大学経済学部2年。4月から3年生だ。僕よりも年下か。緩くかかったパーマが彼の甘い顔立ちを引き立てている。履歴書の右上に貼られた写真はキリッとした印象だが、目の前にいる彼はにこやかで好感が持てる。瀬尾さんはとても優しそうな人だ。言葉遣いもきちんとしていて、奥さまも洋子さん [続きを読む]
  • 恋文・37
  •  お夕飯はいつもより豪華だった。松阪牛のサーロインステーキに筍ご飯、サラダ。僕が大好きなクリームシチューとカニクリームコロッケ。デザートは洋子さん特製の杏仁豆腐。フルーツもたくさんカットしてあって、何もお手伝いしなかった僕は洋子さんに申し訳なかった。取得した免許証を見せると、奥さまは「良かったわ」とお喜びになった。早速「怜二くんに会いに行かないと」と張り切っておられる。前のように、僕の帰宅が5時過 [続きを読む]
  • 恋文・36
  • 「初めまして〜!柴田柚季乃(ゆきの)でーす!」柴田さんは髪をかき上げながら自己紹介した。気の強そうな瞳。黒い髪は艶々として、元気一杯の彼女の象徴のようだ。とくに「美人」というわけではないけれど、内から湧き上がってくるバイタリティーが隠せない人だ。「今頃、初めまして、かよ?」「悪い?」腕を組み恭悟を挑発するかのように見た柴田さん。それを見て恭悟は、僕にすまなそうに言った。「名前は上品で大和撫子っぽい [続きを読む]