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京都山奥発のLove Train https://blog.goo.ne.jp/love_train

薪ストーブ、野菜作り、四季折々の暮らしぶりなどを日々綴っています。大好きな映画レビューもあり。

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2006/05/12

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  • 17歳の瞳に映る世界

    ★★★★2020年/アメリカ監督/エリザ・ヒットマン削ぎに削ぎ落とした語り口とリアリティを追求した演出で図らずも妊娠してしまったオータムの切なさが胸に迫る。また、驚くほど口数が少ないこの2人の従姉妹関係が興味深い。オータムの真の理解者として、ひたすら彼女のために行動するスカイラーの背景にも思いを馳せる。17歳の瞳に映る世界

  • オールド

    ★★★☆2021年/アメリカ監督/M・ナイト・シャマラン突然時間のスピードが早まる海辺に連れてこられた家族たち。異常に年老いてしまうという絵面の引きで引っ張るネタ系映画と思いきや、SFホラーであり、家族の物語であり、時間をめぐる哲学的な物語でもあり、どの角度からでも楽しめる懐の広さ。シャマランこんな余裕のある映画取れるようになったんだ。ちゃんとオチも付いてる抜かりのなさ。オールド

  • 83歳のやさしいスパイ

    ★★★☆2020年/チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン監督/マイテ・アルベルディ老人ホームにおじいちゃんが潜入。ドタバタ騒動かと思いきや。セルヒオ爺さんが実に魅力的。そしてご老人が発する滋味深い言葉の数々に感嘆。マジでセリフ仕込んでない?老年は誰しも孤独だ。しかし豊かな繋がりも存在する。目の前の人に関わる事を手放してはいけないのだ。83歳のやさしいスパイ

  • クーリエ 最高機密の運び屋

    ★★★★2020年/イギリス・アメリカ監督/ドミニク・クックカンバーバッチ、これでアカデミーノミニーでしょ?ってくらいの熱演。一般人が図らずもスパイをさせられ怒涛の展開。究極の状況で人は正義を貫けるのか。国家は個人を助けるのか。ブリッジオブスパイにも通じる。巻き込まれサスペンスとしても実に面白い。力作。クーリエ最高機密の運び屋

  • 愛すべき夫妻の秘密

    ルシルボールという女優、およびその人気のテレビ番組というものを知らないため、何が何だかさっぱりわからず。前提知ってる状況でどんどん進むの、ちょっと不親切設計過ぎやしませんかね。JKシモンズ、このちょい役でノミネートなの?こんな置いてけぼり映画久しぶりだわ。愛すべき夫妻の秘密

  • おらおらでひとりいぐも

    ★★★★2020年/日本監督/沖田修一夫に先立たれた老女の変わらない孤独な毎日を描く秀作。淡々とした筆致に挟まれるおかしみたっぷりの演出がいかにも沖田修一らしく、日常の愛おしさをひしひしと感じさせる。大きな家を捉えるロングショット、里山の美しさ。撮影がいいと思ったら流石の近藤龍人であった。我が母も無くなった父のことを「クソ●●」などと呼び、替え歌まで作ってしまう。あまりの一致ぶりに苦笑い。思い出を反芻し、妄想し、付け足し、そうして残りの人生を生きていく。老いるとはそういうことか。ラストシーンに込められた希望に安堵した。おらおらでひとりいぐも

  • ウォルト・ディズニーの約束

    ★★★★2013年/アメリカ監督/ジョン・リー・ハンコックメリーポピンズに詳しくなくても大丈夫。偏屈な英国中年女とアメリカ人富豪の交流を描いた上質な作品。様々な対立が溶けていく、主演2人の演技はさすがの貫禄。原作者と製作委員会の物語でもあるので、その攻防は映画ファンとしても楽しめる所。エマトンプソンが最高。原作者パメラの過去が映画製作の現在と交互に描かれるが、このオーストラリアパートが涙を誘う。父が押しつぶされた男らしさ、その呪縛を娘が書くことで解放したというメリーポピンズの原点話。またメリーポピンズを見返したくなった。ウォルト・ディズニーの約束

  • 新聞記者

    せっかくこの題材に斬り込んだのに、感傷的な演技が多過ぎる。上からの命令に誰も逆らえず、ひたすら俳優陣の涙ぐむ演技が続く。怒りや憤りよりも悲しみを前面に出す演出では到底グローバルに訴えることはできない。新聞社も検察もできなさばかりが目立ちとても残念。タイトル新聞記者なのだから暴き、書き、社会を動かすダイナミックなシーンがもっとあっていい。一番動きがあるのが輪転機が回るシーンとは…。改ざん資料を記者に渡す理由が同じ悲しみを知る者同士というのも頂けない。役者陣は熱演。眉毛と目を一つずつ動かせる吉岡秀隆に驚嘆。新聞記者

  • いとみち

    ★★★☆2021年/日本監督/横浜聡子津軽三味線のグルーブ感が好きだ。主演の駒井蓮。ずいぶん練習したんだろうねえ。様になってるしちゃんと聴かせる。豊川悦司もステキだが、祖母役の三味線奏者の西川洋子がいい。この人の存在なくして成り立たない作品。津軽弁全くわからないがそれもいい。青春映画の佳作。いとみち

  • そうして私たちはプールに金魚を、

    ★★★★☆2016年/日本監督/長久允たまらんね、このセンス。思春期の醒めた感覚、どうせ人生なんてという中学生の厭世観を綴るセリフの洪水とポップな色とりどりの映像。そしてメタ構造。ただの馬鹿騒ぎではない知性も感じさせる。何とキュートで魅力的な作品。そうして私たちはプールに金魚を、

  • ドライブ・マイ・カー

    生きること。赦すこと。愛すること。伝えること。演じること。1つの作品に多彩なテーマが存在し、呼応し合う。鑑賞者はさらに村上春樹やチェーホフへと世界を深める。どこまでも広がる知のスケール感。かつ、多様性と男らしさの放棄という現代のテーマが融合する。参りました。家福の再生をチェーホフのワーニャ伯父さんに重ね、繰り返しテープでセリフを流し、自らの演出法までさらけ出しセリフを染み込ませる。言葉に対する並並ならぬこだわり。それは言葉を疎かにしている現代人への痛烈な警鐘にも感じられる。我々はもっと言葉を大事にせねば。知的で物静かな人物が多い中、ただ1人世俗的で底知れぬ狂気を感じさせる岡田将生の存在が効いている。後部座席で家福が知らない、あの物語の続きを唐突に語り出すシーンは背筋がゾクゾクした。ドライブ・マイ・カー

  • シャン・チー/テン・リングスの伝説

    ★★★★2021年/アメリカ監督/デスティン・ダニエル・クレットントニーレオン見たさに鑑賞。普通にカンフーアクションファンタジーとして楽しむ。主人公がそもそもスーパーパワーを持たない普通の人というのがいいし、安直に恋愛に持ち込まないオークワフィナとのバディ感も好感。後半はネバーエンディングストーリーだった…シャン・チー/テン・リングスの伝説

  • モンタナの目撃者

    ★★★☆2021年/アメリカ監督/テイラー・シェリダン森林消防隊員の女性と少年の逃避行を描く人間ドラマ。少年の父が殺された理由はマクガフィンでやさぐれたアンジーと森林火災の恐ろしさを堪能すべしな1本。テイラーシェリダンだと鑑賞前のハードルが上がるしグロリアとか刑事ジョンブックとか既視感のある作劇がやや物足りなし。モンタナの目撃者

  • 星の子

    ★★★★2020年/日本監督/大森立嗣未熟児だった自分のために両親は新興宗教に入った。それでも私は両親の側から離れない。思春期の女の子の繊細な感情を丁寧に掬い取る秀作。エキセントリックになりがちな題材を淡々とした筆致で描く演出がいい。主演の芦田愛菜が親思いの中学生を好演。頭にタオルは笑っちゃったよ。新興宗教の家族たちの日常。その滑稽さも含めて淡々と見せるところが作品の独特の味わいになっている。彼らの行動が滑稽であればあるほど、切なさ倍増。また、立ってるだけで十分に胡散臭い教団側の黒木華と高良健吾やイケメン教師の岡田将生といいキャスティングが抜群。星の子

  • 浅草キッド

    ★★★★2021年/日本監督/劇団ひとり芸に人生を賭けた師弟の物語が実に抑制的に描かれていて驚いた。カットバックを用いた時制の行き来やラストの長回しなど、映画的演出も上品でスムーズ。時代を掴む者と取り残される者という普遍的物語とあのビートたけしの売れない時代という個の物語としての魅力が見事に両立する秀作。とにかく柳楽優弥がすばらしい。モノマネ感が前傾に来ると、とてもじゃないけど見れなかったと思う。シャイだけど内には秘めるものがあって、毒もあるひとりの芸人としての実在感。クランクイン前に真似るのは一旦やめようと提言した劇団ひとりの判断は正しい。浅草キッド

  • 音楽

    ★★★★2019年/日本監督/岩井澤健治声優坂本慎太郎に惹かれ、原作漫画はまるで知らずに鑑賞。ただただベースとドラムが鳴ってるだけでグルーブが生まれる。そのプリミティブな高揚感が独特のタッチと合間って、不思議な魅力を放つ。アニメ化には多大な時間と努力があったようだが、それを前面に出さない抜け具合もクールでいい。音楽

  • DOPESICK~アメリカを蝕むオピオイド危機~

    ★★★★★大傑作。処方通りに服用して依存症になる患者の地獄、それを処方した医師の悔恨、虚偽のデータで莫大な富を築く一族の骨肉の争い。地を這うように捜査するDEAや地方検事。オピオイドの恐ろしさと巻き込まれる人々の重厚な人間ドラマにただただ圧倒された。マイケルキートンとケイトリンデヴァーは本作でゴールデングローブ賞にノミネート。しかし、それ以外のキャストもすばらしくて役者陣みんなベストアクトでは?というくらいの熱演。特に私はピーターサースガードを推したい。DOPESICK~アメリカを蝕むオピオイド危機~

  • ロスト・ドーター

    ★★★★2021年/アメリカ監督/マギー・ギレンホール単身避暑に来たレイダ。海辺での少女の迷子をきっかけに若かりし頃の子育ての記憶が呼び覚まされる。悔恨と懺悔の意識。乱れに乱れる心。タイトルにある「ロスト」が二重三重の伏線となり、母の役割とは母性とはを突きつける。知性と危うさが共存するオリビアコールマンが圧巻。ロスト・ドーター

  • ノッティングヒルの洋菓子店

    ★★★☆2020年/イギリス監督/エリザ・シュローダー3世代の女性が協力し合い洋菓子店を経営する人間ドラマ。とにかくノッティングヒルの街並みが絵になる。そして美味しそうな洋菓子の数々。祖母ミミが住む家も本当にステキ。移民の多い街ロンドンならではの展開と街、食、家の美しいショットの三拍子揃う良作。「ノッティングヒルの恋人」が好きな人はきっとこの映画も満足じゃないでしょうか。街も登場人物の1人のように大事な要素なんですよね。どこを切り取っても絵になる。数年前に訪れた時は残念なことに土砂降りで…。絶対リベンジしに行きたい。ノッティングヒルの洋菓子店

  • POSE シーズン2

    ★★★★☆1991年。マドンナのVOGUEに始まりチャカカーンのI'mEVERYWOMANで終わる完璧な音楽構成。リアタイで聞いていた世代としてはクソミソに泣けた。エイズの蔓延、アクトアップ、人権問題。もがきながらも前に進む人物たちの成長譚。とにかく1話1話の内容が濃密!大感動。トランスが殺されても警察は1ミリも動かない。エイズへの偏見。商売を邪魔する白人。酷い仕打ちばかりが彼らを襲うが、それでも煌びやかなボールの世界で彼らは輝く。S1で感じた美しさを評価するのは現代にフィットしていないのでは?という違和感も見事に回収。すばらしすぎる。POSEシーズン2

  • くれなずめ

    ★★☆2021年/日本監督/松居大悟男達のしょーもないわちゃわちゃが本当にしょーもないわちゃわちゃとしか感じられない。喪失を埋める方法が悪ノリというのも時代に逆行しているよう。種々の回想がインサートされるが号泣する程の絆があったかも判然としない。そして全編に漂う何も動いていないような停滞感がキツかったここで示されるわちゃわちゃには批評的視点があるのだろうか。それすらもわからない。奇しくも悪ノリを批評的に描いている(と私は感じた)「あの頃。」と対照的。構成されるものの全てが断片的で、全体をつなぐ線が見えてこない。停滞して見えるのはそういうことからかも知れない。くれなずめ

  • アオラレ

    ★★★2021年/アメリカ監督/デリック・ボルテあおり運転の話ではない。1人の狂人にうっかり目をつけられ異常な執着で追い回されるホラーだ。冒頭の何気ない会話が収束の伏線になるあたり、王道のジャンルホラー。「早く警察呼べよ〜」というツッコミ前提で見るのが肝要。しかし、目をつけられたら最後という恐怖は十分味わえる。アオラレ

  • ファーザー

    ★★★★☆2020年/イギリス・フランス監督/フロリアン・ゼレール映画が始まってすぐアンソニーの混沌世界が提示される。この人は誰?ここはどこ?認知症の描写が観客にとってサスペンスになる面白さ。そしてその混沌が一つの世界線にまとまった時、観客は老いることの悲しさを知る。様々な時空をのびやかに演じるサーホプキンスの演技を堪能。3年前に亡くなった父も認知症だったので、この手の作品は避けていた。どうしてもアン目線で見て、様々な後悔が頭をよぎる。ただ、本作は観客をエモーショナルにさせようという意図がないのがいい。かと言って冷たいかと言うとそうでもなく、多くの人々の慈愛を見せてくれる。ファーザー

  • パーム・スプリングス

    ★★★☆2021年/アメリカ監督/マックス・バーバコウタイムループは「自分の未来がわかった時、人はどう生きるか」を描くジャンルとも言える。本作はこのままでいいという選択肢を示すところがユニーク。謎の老人が時々(これがミソ)襲撃に来るというスパイスもある。現状維持か可能性に挑戦するか。ラブコメの秀作。物語が円環構造で閉じた世界なのに対し、舞台は青い空が抜けるリゾート地。そのコントラストが効果的。こんな所ならタイムリープも悪くない。もう何千回もこの世界を生きているというナイルズ。その心地よさが永遠に続くならそれでもいい。これって不老不死のテーマでもある。パーム・スプリングス

  • 追想

    ★★★★1975年/フランス監督/ロベール・アンリコナチスに妻と娘を殺された男の復讐劇。自身が生まれ育った古城に立て籠もり、一人また一人とナチを殺す。そのプロセスの度々に妻と娘との美しい思い出がインサートされる展開が独特。何と言ってもロミーシュナイダーの美しさよ!イングロリアスバスターズの参照作品とも言えるトラウマ作品。冒頭のんびりした曲に親子がサイクリングする映像で始まる。これが復讐物なの?というのどかさ。そしてその後のナチスの残虐な村人皆殺し行為。コントラストが強烈。妻の死体を見た夫が頭の中で殺された瞬間を想像するシーンを入れるというのもユニーク。鑑賞者も夫と共に復讐の思いをたぎらせるのだ。追想

  • Swallow スワロウ

    ★★★★2019年/アメリカカーロ・ミラベラ=デイビスカラフルで美しく鮮やかな映像にぐんぐん引き込まれた。夫のモラハラは物語の中心ではなく、実は妊娠恐怖が主題だった。そう来たか。子を宿したとき、女性は命をこの世に送り出すことの重さに対峙せざるを得なくなる。異食症は特異だが普遍的な物語だ。とても面白かった。食べた後の描写に驚き。いや、でもそれなんかわかる。自分の体を通っていったものって愛しいよね。ハンターにとって異食は対象への自傷行為でもあり、愛したい行為でもあったのではないか…などと想像してみる。女性用○○を延々と映すラストカットも様々な含みを帯びており、巧い。Swallowスワロウ

  • Girl ガール

    ★★★★2021年/ベルギー監督/ルーカス・ドン女性になるために、バレリーナになるために、血の滲むような努力を続けるトランスジェンダーのララ。ドキュメンタリーのような手法がさらにその痛々しさを増幅させる。周囲の大人は親身だし理解もある。それでも突き当たる壁。ララの悩みもがく姿とひたすら受け止める父に心打たれた。Girlガール

  • 懲戒免職

    ★★★★2006年/日本監督/渡邉あやもし高校に気だるいオダギリ先生がいたら、確実に自分の男性観は狂っていただろう。峰不二子を黒板に描くオダジョーの危うさよ。彼を見つめる吉高由里子の瑞々しさよ。15分と言わず120分で観たかった。両者メゾンドヒミコ、紀子の食卓時代。美しさと儚さ全盛期の逸品。懲戒免職

  • 妖精たちの森

    ★★★☆1972年/イギリス監督/マイケル・ウィナー英国の郊外の大邸宅。下男と家庭教師の淫らな肉体関係。それを日々覗いている幼い姉弟。愛することは憎むこと。愛するものは死をもって繋がる。下男を慕う姉弟は彼らの言動を真似、無邪気な狂気を振るう。いわゆるアンファンテリブルものだが性描写も赤裸々でトラウマ納得の逸品。本作後にラストタンゴinパリ撮入のMブランドのただならぬ妖気と、子供の心を持ったまま大人になった下男の人物造形が面白い。姉弟がどんどん感化される様は子育ての恐ろしさも感じさせる。そして汚らわしい男だからこそ惹かれる家庭教師の倒錯した愛。愛と憎しみ、清らかと汚らわしさの混沌。妖精たちの森

  • 007 ノー・タイム・トゥ・ダイ

    ★★★★☆2021年/アメリカ監督/キャリー・ジョージ・フクナガ賛です。ダニエルボンドのフィナーレとして大いに堪能。3ヶ月ぶりの映画館ということもあり、大画面で聞くあのテーマソング、めくるめく世界美紀行、リヌス・サンドグレンによるバチバチに決まったショットに大満足。とにかくダニエルクレイグお疲れ様!のための167分ですね。ボンドという人間の一生を5部作のラストとしてよくぞまとめたなと感心。パロマもマドレーヌもそれぞれの美しさを存分に発揮。ラミとボンドの最後のアレはウルトラセブンオマージュ?と思ったのは私だけでしょうか。豪華ディナーいただいたようで満腹。おいしゅうございました。007ノー・タイム・トゥ・ダイ

  • 空白

    ★★★★2021年/日本監督/吉田恵輔父親のモンスター化から人の恨みや好奇心が玉突き事故のように誘発される。唸らされるのは敢えて意図的に見せない部分。父娘の今まではもちろん、万引き直後の店長と花音に何があったか、彼女をはねた女性と母親はどう過ごしていたか。それが空白。観客の中途半端な想像力を拒絶する凄み。「あなたのためを思って」取る行動に人は救われず、何気ない一言で人は救われる。寺島しのぶと奥野瑛太(マイティ、ワンカットなのにおいしい!)の対比がすばらしい。片岡礼子のあの衝撃の言葉もしかり。他人の空白を他人が埋めることはできない。空白を埋められるのは自分だけなのだ。空白

  • 架空OL日記

    もう永遠に続けばいいんじゃないの。それくらいの日常性と中毒性。最初はこのゆるさで大丈夫か?と思ったが、回を増すごとにキャラがグングン立ってくる。私の推しは小峰さま。オレも更衣室でコミネコールがしたい!コ・ミ・ネ!コ・ミ・ネ!どこにでもいそうなOLという体を装っているけど、相手のダメなところもわかってて程よい距離を保っている5人の関係性は実は限りなくファンタジーではないか。そこが心地いい。後、各キャラを反映した洋服のコーディネートがポイント高し!テレ東ドラマはいつもスタイリストさんが優秀。架空OL日記

  • KCIA 南山の部長たち

    ★★★★☆2019年/韓国監督/ウ・ミンホまるでスピルバーグのスパイ物のような風格。端正な絵作りで抑えに抑えた演出と森で逃げ惑うパク部長のスローモーションなど叙情的シーンとのコントラスト。そしてあのラストカット。暗殺を成し遂げてどうなる?と高まる気持ちをあのカットで収めるセンスに完敗。傑作。イ・ビョンホンとクァク・ドウォンが確執の関係というキャスティングが最高。2人とも絶体絶命のところで足元を見るというシーンがあるし、日本語で友情を交わすシーン、盗聴中に歌い出すシーンなど、さらりと差し込まれるカットが心を揺さぶる。まるで付け入る隙がない。完璧。KCIA南山の部長たち

  • THEGUILTY/ギルティ

    ★★★☆2021年/アメリカ監督/アントワン・フークアオリジナルよりも感情の起伏が前面(こんなキレ気味な911担当者は困るぞ)になり、それが却って作品の邪魔をしている感。自分が正義だと思った行動、その顛末によって己の罪を再び深く認識する。タイトルの持つ意味がオリジナルより伝わりづらくなったのではないか。THEGUILTY/ギルティ

  • まともじゃないのは君も一緒

    ★★★★2021年/日本監督/前田弘二女子高生と塾講師のバディムービーというありそでなかった新ジャンル。しかも成田凌がモテない理系男子をこんなにうまく演じるとは。彼の引き出しの多さに感服。一方、小泉孝太郎の中身うっすーい男の安定感よ。最小限登場人物のアンサンブルがとても居心地よかった。まともじゃないのは君も一緒

  • 悪い種子

    ★★★★☆1956年/アメリカ監督/マービン・ルロイ伝説のトラウマ映画ようやく鑑賞。NHKBSありがとう。庭師を焼き殺した後、嬉々としてピアノを弾くローダ。その甲高い音色が部屋から聞こえて戦慄。周囲の大人にはウケのいい立ち居振る舞いはサイコパスそのもの。恐怖を緩和させるためのカーテンコールも今見ると不気味極まりない。何の躊躇もなく人殺しする少女の描写は確かに恐ろしいが、私は母の恐怖に共鳴してしまう。子を産んだ女性なら大なり小なり思うのではないか。「この子がこんなに○○なのは自分のせい」と。もちろん、優性思想は否定されるべきものだが、母子の血の繋がりという点では普遍的な恐怖物語だと思う。悪い種子

  • メア・オブ・イーストタウン

    タイトルが宣言している。メアという女性の物語だと。それにケイトウィンスレットが見事に応えた人間ドラマ。電子タバコが手放せないやさぐれ中年刑事。息子の死という喪失を抱え、時に人としての道を外す。その泥臭い姿をさらけ出す演技が貫禄の域。田舎町の殺人事件、女刑事、そして周辺人物の隠された秘密。偶然にも先日見たばかりの「ブロードチャーチ」とそっくり。すでにこの種の設定がフォーマットになりつつあるとも言えるが本作は何より主人公メアが立っているし、周辺人物が抱える苦悩や三者三様の親子の在り方に引き込まれた。メア・オブ・イーストタウン

  • 007スペクター

    ★★★★2015年/アメリカ監督/サム・メンデス冒頭アクションが全てな007シリーズ。死者の祭りの大騒ぎ、長回し、大爆発、ヘリコプターの超危険なスタントまでの大迫力で十分満足だが、以降はアクションのために物語が動いている感が拭えない。オーベルハウザーとの幼少期の因縁は必要だったか?盛り込みすぎて消化不足が目立つ。レアセドゥのボンドガールは今シリーズ最強の存在感。一方、盛り込みすぎの弊害を食らったのはモニカベルッチ。出演シーン少なすぎだし、全く物語に絡まないのはとても不満。クリストフヴァルツは悪の総大将らしさがなく、普通のおじさん。悪役のキャスティングが難しい時代だね。レミマレックに期待。007スペクター

  • ブロードチャーチ〜殺意の町〜 S1

    殺人事件など起きない田舎の海岸で少年の遺体が発見される。徐々に明らかになる住民たちの秘密。ってこれツインピークスじゃん。犯人が意外な人物ゆえミステリーとしての面白さはあるが、疑わしき人物たちの深堀りがやや足らず。断崖絶壁の風景は印象的だけど。殺人事件ものって、放送時は犯人は誰かってことで視聴率を稼いでいけるんだろうけど、ビンジウォッチになるとそれより人間ドラマとしての面白さを求めてしまうわけで、やや物足りない。シーズン2を見るか微妙…。ブロードチャーチ〜殺意の町〜S1

  • BLUEブルー

    ★★★☆2021年/日本監督/吉田恵輔吉田恵輔なので、誰がいつダークサイドに落ちるのかと見てたら予想外の王道。タッパのでかい松山ケンイチと東出昌大、両名並ぶと映画が映える。そしてダークホース柄本時生。ずっと負けでもいいじゃないか。本当の強さとは何だ?好きと才能について描く秀作。BLUEブルー

  • ホルストン

    ほアメリカ人デザイナー、ホルストンの成功と挫折の物語。主演のユアンが我儘放題の天才デザイナーを熱演。伝説のクラブ、伝説のオフィスなど70-80年代当時のNYの再現ぶりが凄い。いかに天才でも、投資家と資本主義に呑み込まれる。ファッションとビジネスの話でもある。ユアンマクレガー、本作でエミー賞授賞。確かに熱演なんだけど、芸術家気質のゲイの男性が男とドラッグに溺れて転落するという話はよくあるもので目新しさはない。(彼のこれまでのキャリアから考えるとチャレンジングな役と言えるのかもしれないが)それでも、ホルストンの邸宅、別荘、パリの名だたるデザイナーたちとベルサイユ宮殿でショー対決。めくるめくゴージャスなセットと舞台は眼福。ここまで上り詰めた彼が落ちぶれて、全国チェーンブランドのデザインをさせられる。湯水のごとく金を使...ホルストン

  • 女は男の未来だ

    ★★★★2004年/韓国監督/ホン・サンス女はいつも男を慰め、やらせてくれる。男の無自覚の最低行為がこれほどつまびらかにされる映画が他にあるだろうか。同じ女性と性行為をした男たちの連帯感。価値観の押し付け。勝手な思い込み。普通の男の罪深さはすでにホン・サンスによって2004年に表現されていた。ホンサンスの飄々とした作風により、彼らの「自分は悪いことしているとはこれっぽっちも思っていない」感が前面に出てくる。クソエピソードの連発だが「清楚で大人しそうなところを好きになったのに、派手なパーマをかけて来たのを見て肩を落とす」という場面が秀逸すぎる。女は男の未来だ

  • 自由が丘で

    ★★★★2014年/韓国監督/ホン・サンス語り口対極の「メッセージ」を彷彿とさせる時間物語。片思いの女性を追いかけソウルへやってきた男。果たして彼女に会えるのか。時間が戻ったり、追いかけたり、入れ替わったり。時の流れという概念に向き合い、かつ夢か現か藪の中というとびきり実験作。なのにこの微笑ましさは何なの。時間をいじるということでは「メメント」もそうだが、ホン・サンスはそれを謎解きとして利用しない。これほど、時間があっちこっちするのに、イライラせずひたすらニヤニヤ見守れるところが唯一無二。ムン・ソリやユン・ヨジョンなどの人気俳優が自然体でどこにでもいそうな人を楽しげに演じている。自由が丘で

  • チェルノブイリ

    ★★★★★凄まじいの一言。見応えがあるとか、そんな言葉が空虚に感じられる。廃炉になった原発の内部で撮影されたという事故シーンの圧倒的な恐怖。容赦無く描かれる原爆被害。科学者の苦悩。命を賭けた人海戦術。どこかで目にした「全人類見るべき」に賛同。「1時間ごとに広島原爆の2倍相当の放射線を放つ」。その恐ろしさを最も実感できるのは我々日本人だ。見ていて辛いのは間違いないが、一方で事実を知らなければという強い思いが込み上げる。セットの作り込みも驚異的。5分ごとに語りたくなるエピソードが連続。今まで見たドラマで最も密度が濃いと断言チェルノブイリ

  • Wの悲劇

    ★★★★1984年/日本監督/澤井信一郎先輩女優のスキャンダルの身代わりを引き受ける薬師丸の陶酔した目。役に飢えていた彼女は千載一遇の汚れ役を演じきる。演技したいという欲望が彼女自身を覆い尽くす。演じることはそんなにも底なし沼の魅力があるのか。演技についての映画だ。薬師丸ひろ子の魅力を引き出しているのは間違いなく三田佳子。作品内での彼女の挑戦的な態度は、薬師丸ひろ子本人に向けたもののようにも感じられる。アイドル女優が大人の女優として成長することのように、本作は様々なメタ構造を持っている。それも面白さの一つだろう。Wの悲劇

  • POSE

    ★★★★80年代ゲイカルチャーの再現ぶりはすばらしく、「ボール」と呼ばれる週末の対決イベントの煌びやかさは圧巻でアガる。一方、忍び寄るエイズの恐ろしさにも向き合い、互いを支え合うLGBTQの人たちの人間ドラマとしても見応え抜群。故郷から身一つで出てきた若者を受け入れる「ハウス」と「マザー」の存在。こうした共助の形があることは全く知らず、互いに支え合い、誇りある生き方を模索する人物たちに魅了された。全キャストがトランスジェンダー俳優というのも画期的。特にゴッドマザーを演じるドミニクジャクソンの存在感が凄いPOSE

  • CLIMAX クライマックス

    ★★★★2018年/フランス・ベルギー監督/ギャスパー・ノエ誇りを持って世に出すフランス映画、ドーン!もうタイトルで痺れ、冒頭ダンスシーンで5億点。ダンサーたちの驚愕の動きに酔いしれる。バッドトリッパーたちの一夜の鬼畜大宴会。妊婦の腹を蹴るという絶対に許せない不道徳行為をも呑み込む狂乱の宴。背徳的な魅力に抗えない。ただのバカ騒ぎのように見えて、いろんな伏線が仕込まれている。LSDによって見える幻覚は自身の心の闇によるものゆえ、それぞれのダンサーの奇行は彼らの何を呼び覚ましているのかと想像を巡らせてしまう。嘔吐、肉欲、発火、暴力。混沌の地獄絵図とわかっているのに、リピート鑑賞してしまった。CLIMAXクライマックス

  • あの頃。

    ★★★★2021年/日本監督/今泉力哉これは青春ノスタルジック物語というより、“あの頃”は大目に見られていた男たちの集団行動の否定(終焉)を描いた作品ではないのか。男性監督と男性脚本家が真摯に考え表現した内省的な作品と感じられて仕方ない。それらを一番体現していた彼が悲しい末路をたどるという点においても。もちろん、ノスタルジーにばかり浸るなというクレしんオトナ帝国のテーマも垣間見える。しかしラストに劔が引用する、あるモー娘。メンバーの言葉が象徴的なのだ。2021年の今見ると目を覆いたくなる一連の内輪ノリ・悪ノリ行動。本作をMetooの流れの中にある1本と見る見方は間違っているのだろうか。また、恋愛研究会の地下イベントの悪ノリ・悪ふざけは昨今問題になっていた松江監督の一連の騒動を思い出してしまった。好きなもの同士な...あの頃。

  • すばらしき映画音楽たち

    ★★★☆2016年/アメリカ監督/マット・シュレイダーおなじみのフレーズを聞いた時の高揚感。音楽の役割は大きいとはわかっているが、その思いがさらに強まる。しかし意外と丸投げなのに驚き。イメージや世界観を共有してあとはよろしく。自由度高いのは面白そうだが大変な仕事だ。そしてハンスジマーがバグルスにいたとは!「2001年宇宙の旅」でキューブリックができあがった音楽を全部ボツにして、結局クラシックを採用したとか、坂本龍一がベルトリッチにボツにされた曲を「SweetRevenge」として発表したりとか、映画監督と音楽監督の関係性って面白いネタが多い。映画やドラマにしても面白いよね。すばらしき映画音楽たち

  • 地下鉄道 自由への旅路

    ★★★AmazonPrimeバリージェンキンス全話監督で話題だが私の肌には全く合わず。特に撮影が好みじゃない。クレーンによる移動ショット多すぎ問題(お尻ムズムズ)、逆光ショット多すぎ問題(目がチカチカ)。狙ってやってます感が無理。超高画質カメラで映像はキレイだけどさ。ムーンライトのように、カラーコーディネーションが徹底的に行われている。しかしだよ。基本地獄めぐりの話で、黄色や茶色を中心としたくすんだ色目のカラーコーディネーションが続くので正直、気が滅入ってしまった。黒人奴隷解放前にもしも本当に地下鉄道があったなら。設定は面白いんだけどなあ。地下鉄道自由への旅路

  • 弁護人

    ★★★★☆2013年/韓国監督/ヤン・ウソク学歴コンプレックスを抱く税務弁護士がお世話になったクッパ店の息子のために立ち上がる。一見ベタなストーリーの予測を遥かに超えてくる迫力の展開。正義のために闘う、その真っ当さがいかに困難な時代だったか。胸が痛くてたまらない。後半は鬼気迫るソンガンホにやられっぱなしだった。だいたいこの手の作品は悪い奴がムカつくほどにヒートアップするのだが、本作のクァク・ドウォンの悪人ぶりもある意味期待通り、いやそれ以上。まさに蛇の目。睨まれたら終わりの感満載。自国の歴史に堂々と斬り込み、娯楽作品に仕上げる韓国映画。どれを見てもハズレなし。弁護人

  • EXIT

    ★★★☆2019年/韓国監督/イ・サングン毒ガスを避けるためビルからビルへと逃げるというアイデアが面白い。次から次へと襲い掛かる難題にもひねりがあって飽きさせない。感動シーンにもユーモアを交えてくるのがいかにも韓国的。肉体派俳優でなくても、ちゃんとアクションを魅せる。韓国エンタメ映画は裾野が広いね。EXIT

  • コラテラル 真実の行方

    ★★★★☆Netflixドラマ傑作。デビッドエアー脚本、キャリーマリガン主演の骨太ポリティカルサスペンス。全4回なので長めの映画を見たよう。タイトで緊張感あふれる演出、警察・陸軍・MI5の三つ巴のスリリングな駆け引き。そして重要人物は全て女性。驚くほどに抑えた演出がBBC印。中東移民問題を幾度となく扱ってるBBCドラマだが、配信されるもの全部傑作ってどうなってるんでしょうか。妊娠7ヶ月の刑事を演じるキャリーマリガン。なんと撮影中実際に妊娠していたとか。陸軍将校役も女性だが単なる目配せではなく、女性であるべき意味がしっかり落とし込まれており何度も膝を打つ。一人の移民青年の殺人事件をきっかけに、解決への道があっちに行ったりこっちに行ったり、最後の最後に大逆転。それをこれ見よがしに見せないのがほんとBBC!これがアメ...コラテラル真実の行方

  • 新感染半島 ファイナル・ステージ

    ★★★★☆2020年/韓国監督/ヨン・サンホシチュエーションホラーからサバイバルアクションへ。父性愛から母性愛へ。大ヒット作の続編として文句のつけようのない舵の切り替え。マッドマックス的な世界観にロメロオマージュもチラリ。壮絶なカーチェイスは息を呑む。見事な娯楽大作。面白かった!前作の方がいいという声をチラホラ聞き、躊躇していたけど、いやあ痺れた。ゾンビと人間の鬼ごっことか、設定が実に面白い。漫画的ではあるがディテールの作り込みがしっかりしてるので世界観にハマれる。母親を軸にしたのも良かった。トラックのクラクション鳴らすところで危うく泣きそうに。新感染半島ファイナル・ステージ

  • アメリカン・スリープオーバー

    視線の映画だ。高校生たちの一夜の群像劇を視線と余白で物語る。アメリカンとタイトルについているが、まるでヨーロッパ映画のような佇まい。しかもスクールカーストから全く解放された世界観。手を繋ぎたい、キスしたい。若者たちの甘やかな願望が夜の狭間に潜めく。原題は「TheMythoftheAmericanSleepover」。Mythに込められた意味は何だろうと想像してしまう。一目惚れの女性を探す少年、双子女子が好きな大学生…etc。まるで真夏の夜の夢のようにくっついたり離れたり。「今日はいろいろあったからキスはもういいわ」。16歳の粋なセリフに痺れた。本作で感心したこと。それは少年たちが必ず「手を握ってもいい?」「キスしてもいいかな?」と聞くことだ。監督の願望込みの脚本か、それともこれが今の米国のリアルなのか。いずれに...アメリカン・スリープオーバー

  • 悪の教典

    ★★★2012年/日本監督/三池崇史美青年期の林遣都目当てに鑑賞。やっぱ大人が子供を皆殺しにするのは見ていて気持ちのいいものではないね。一人ずつターゲットを絞り殺しにかかる前半部はサイコパスものとしての面白みがあったが後半の大量殺人は全くノレず。今見ると、松岡茉優など生徒たちがすごい豪華キャストで驚き。あと、このミス1位って言うけど、この話のどこがミステリーなの?原作からだいぶ変わってるのかなあ。悪の教典

  • 朝が来る

    ★★★★☆2020年/日本監督/河瀬直美我が子を手放さなければなかった少女の悲劇的な運命と養子に迎えた我が子を慈しむ夫婦の生き様。ドキュメンタリーとフィクションの境目がない演出が効果的で直球の感動をもたらしてくれる。この演出によって全ての出演者が私たちのすぐそばにいるようなリアリティを持って迫ってきた。なぜ父親である少年の人生には何事も起きず、少女だけが全ての苦を背負うのかと怒りにも似た悲しみを感じずにはいられない。それだけ、蒔田彩珠がすばらしかったのだが。彼女を筆頭に全ての役者の佇まいがいいが、中でも浅田美代子が出色。養子縁組のセミナーシーンは本職の人ではないかと疑うほど。朝が来る

  • ヤクザと家族 The Family

    ★★★★☆21021年/日本監督/藤井道人なんと切ない物語か。ケン坊という孤独な青年の一生を軸に、その背景である日本社会の変化を描き出す。個人と日本社会、この2つのテーマを融合させる脚本が見事。助手席のカメラがそのまま急ハンドルで衝突し人物を捉えるなどのワンカットの迫力ある撮影もすばらしい。19歳から39歳まで20年間の人生を生き切った綾野剛の演技が圧巻。元陸上選手の身体能力が存分に活かされている。車に撥ねられるシーンもスタントなしのようでその気合がびんびんに伝わる。舘ひろし、磯村勇斗も出色。カーネーション熱狂ファンなので綾野剛と尾野真千子が同じ画面に収まるだけで胸熱。公開時、西川美和「すばらしき世界」と並べて評価されていたのがよくわかる。同じテーマでラストが真逆。西川美和独特の物事を斜めから見るような皮肉な視...ヤクザと家族TheFamily

  • オッドタクシー

    伏線回収のカタルシスのためにだけキャラクターが存在しストーリーが動く作品は好きじゃない。そんなひねくれた視聴者の存在も見透かしたかような見事なエンディング。孤独な者達が東京の夜の街で交錯する。キャラクターが動物という事が様々な想像を掻き立てる、その独創性が秀逸。オッドタクシー

  • フランティック

    旅先のパリで妻が失踪。夫は事件に巻き込まれていく。異邦人へのパリの人々の不親切さが絶妙にリアル。80年代欧州旅行した時、パリ人それはそれは素っ気なかった。妻がさらわれる作品をポランスキーが撮るとなるとまた違った味わい。そしてパリを彷徨うHフォードがやけに色っぽい。レゲエやグレイスジョーンズなど、一見パリとはそぐわない選曲がさらに独特の世界観を作り上げている。ポランスキーのセンス、としか言いようがない。フランティック

  • 大統領の料理人

    ★★★☆2012年/フランス監督/クリスチャン・バンサン料理はおいしそうでいいが、宮廷料理界に一石を投じるような展開にはならず。かなりゆるめの展開。確かにプライドの高い男たちが集う厨房でオルタンスの存在は異質なのだが、よくある小競り合いで終始しているのがもったいない。料理の仕方ではもっと面白くなったような気がする。大統領の料理人

  • 恐怖のメロディ

    ★★★☆1971年/アメリカ監督/クリント・イーストウッドバーで引っ掛け一夜を共にした女。翌日から彼女気取りで狂気のストーキング。完全に一線を超えた女の思い込みが怖いのなんの。何度も命を狙われる展開は完全にホラー。刃物を振り回すシーンがまんまサイコなのは笑った。御大イーストウッドもヒッチコック演出をしていたんだと感慨。今やミソジニー映画として名高い危険な情事の元ネタとも評される本作。確かに女は怖いという印象の植え付けもなくはないが、イブリンが元々DJであるデイブのファンであるため、純粋にストーカー恐怖を描いているように感じられる。熱狂的ファンの暴走という視点では、ミザリーの方が近いのではないか。恐怖のメロディ

  • 激動の昭和史 沖縄決戦

    ★★★★★1971年/日本監督/岡本喜八とめどなく続く爆発と炎上にそれを裏打ちするデータがかぶさる。容赦ない残酷描写と演者たちから漂う悲壮感。鑑賞者も沖縄の火の中に放り込まれる。戦争の惨さや軍人の無力さに気持ちも沈むが、キレのいい編集で一気に見せる岡本喜八の手腕。戦争大作の大傑作。その場を生きているかのような俳優陣もすばらしいし、時折インサートされる兵士たちの遺書に胸が締め付けられる。それらはあまりに生々しい。戦時期を生き抜いた人間だからこそできる演出ではないだろうか。沖縄戦終結が6月末。それでも原爆投下を抑えられなかったのはなぜかと考えずにはいられない。激動の昭和史沖縄決戦

  • ジョン・ウィック パラベラム

    ★★★☆2019年/アメリカ監督/チャド・スタエルスキ犬が撃たれてブチギレアゲイン。ストーリーはもうどうでもよくて、最先端の格闘アクションの博覧会と思って楽しむ。特に犬を交えたシーンは発明!圧巻。鑑賞中何度も「いてえ!」と連呼。これほど痛みを感じさせるアクション映画はない。真田広之出演の次作が楽しみ。ジョン・ウィックパラベラム

  • アナザーラウンド

    ★★★☆2020年/デンマーク監督/トマス・ビンターベア飲酒で乗り越えられるかミッドライフクライシス。アルコール摂取を機に中年男4人組が自身の弱さに向き合う物語。様々なものに被せてきた蓋が開き、少しずつ気づく大切なこと。人間の脆さと輝きが飲酒を媒介に交互に映し出される。ただしデンマークの飲酒事情は事前に知っておいた方がいい。16歳から購入可能、高校生の飲酒は日常。アルコールとの距離感が日本とは全く違うからだ。飲酒に対する価値観によってエンディングの感想も異なるはず。しかし、監督の悲しい経験に思いを馳せれば「これは存分に生きよ」だ。沁みる。アナザーラウンド

  • 三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

    ★★★★2020年/日本監督/豊島圭介本作を見たからといって右翼左翼の融和の道筋が見えるわけではない。1969年という時代の断片を垣間見るに過ぎない。しかしこの断片の切っ先は鋭い。結果的に平行線でも「言葉を尽くす」ことを今の我々は完全に手放してしまったのだという現実に打ちひしがれる。大学生時代。中核派ヘルメットの学生が毎日校門に立っていたし、彼らの演説で授業はよく中止になっていた。良くも悪くも彼らの行為が私に政治思想について考えることを促していたのは間違いない。彼らの演説に対して意見を言う教官もいて、あれはあれで貴重な体験だったんだと今にして思う。三島由紀夫vs東大全共闘50年目の真実

  • エルカミーノ ブレイキング・バッド THE MOVIE

    ★★★☆2019年/アメリカ監督/ビンス・ギリガンブレイキング・バッドファンにとっては、ウォルターと決別してしまったジェシーへの想いって、すごい大きいんだなと言うのを実感。ウォルターはやりたいことやって死んじゃったけど、本懐を遂げたという感じだったから、ジェシーもまた自分の道を見つけましたよ、ということをファンに見せる必要があったんだよねー。ドラマ終了後のモヤモヤを収めるための1本とも言える。エルカミーノブレイキング・バッドTHEMOVIE

  • ドクトル・ジバゴ

    ★★★★1965年/アメリカ監督/デビッド・リーン197分の巨編ようやく鑑賞。巨大セットに大群衆エキストラ。歴史に翻弄された男の悲哀が浮き彫りに。原作者の実人生や撮影中の大事故など、壮絶な背景を知るほどに感慨も深くなる。歴史の大波の中で一個人が善に生きることの意義とは。やはり結論、ファッキンイデオロギー。ドクトル・ジバゴ

  • 志乃ちゃんは自分の名前が言えない

    ★★★☆2017年/日本監督/湯浅弘章言葉を話せない、歌えない、周囲に馴染めない。できない者同士で友情を育むのかと思いきや、そうはならない展開がいい。傷を舐めあう友人よりも、まず自分を認めることから始めなきゃ。饒舌なセリフも少なく、表情や仕草だけで繊細な心情を伝える主演二人が天晴。志乃ちゃんは自分の名前が言えない

  • ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

    ★★★☆2014年/ノルウェー・スウェーデン監督/ハンス・ペテル・モランド息子の復讐がいつの間にか犯罪組織の抗争に発展する物語は北欧版ファーゴの様相。黒バックに殺された人間の名前と宗教が浮かび上がるカットがおかしい。北欧ならではの闇社会、その歴史的な背景とブラックユーモアが相まった独特の世界観に満足。怒りの除雪車なんてサブタイ付いてるから、除雪車が殺人マシーンと化すのかと思ったらそうでもないのよ。ファイティングダディみたいな明るさも全然ないし、邦題がダメダメ。でっかい除雪車が走る絵や北欧家具バチバチに決まってる邸宅はフォトジェニックで良い。名優ブルーノガンツ出演も嬉しい驚き。ファイティング・ダディ怒りの除雪車

  • レッド・ファミリー

    ★★★★2013年/韓国監督/イ・ジュヒョン隣家の声が聞こえるんなら、こちらの会話も隣に筒抜では?など確信犯的とも思える雑なコメディパートと、スパイ家族の恐怖の日常のコントラストが絶妙。終盤の絶体絶命のスパイ家族の会話は、まさにクライマックスと呼ぶにふさわしい脚本の妙。不覚にも泣いてしまった。レッド・ファミリー

  • 高い城の男

    ★★★★☆AmazonPrimeもし大戦でドイツが勝利しても、いずれ破綻するなら…。様々な展開が可能な中、優生思想による家族間の断裂を中心に持ってきたのは、クリエイションとしてとても正しい選択だと思う。何でもありなIF-SFで脚本も美術も作り込みがすばらしいドラマだった。パラレルワールドと繋がる技術をドイツが開発し、地下に別世界への入口が建設されるという飛躍した展開も、ドイツ軍内の勢力争い、アメリカ黒人たちの解放運動など、実際の歴史をなぞらえた展開がリアルで緊迫感を保つ。しかも黒人解放運動が共産主義と結びついているなど、ひねり方が面白いのだった。高い城の男

  • V.I.P. 修羅の獣たち

    ★★★☆2010年/韓国監督/パク・フンジョン北朝鮮高官の息子が猟奇殺人犯というだけでも攻めた設定なのに、そこへ南北関係、CIAとの政治的な駆け引きが入り乱れて一大クライムアクションへ突入。強引な展開に若干ツッコミどころはあるが、容赦ないバイオレンス描写が圧倒的。久しぶりにかっこいいチャン・ドンゴン見た。V.I.P.修羅の獣たち

  • 最初の晩餐

    ★★★☆2018年/日本監督/常盤司郎父の葬儀で久しぶりに家族が集まる。なぜ兄は家を出たのか、次第にわかる真相。葬儀を起点にした家族の再生物語はありがちなだが、人間ドラマとしての引力の所以は永瀬正敏と斉藤由貴。永瀬正敏の病人演技の説得力よ。そして私生活のあれやこれやを彷彿とさせ、凌駕する斉藤由貴の凄み。作品批評とはズレるが、個人的には家族の問題を子供に何も話さず、家族が崩壊する話が好きではない。子供にも知る権利があると思うからだ。親がどう生きようが自由だが、付き合わされる子供には言葉を尽くして欲しい。子供が子供のうちに親ときちんと対話する物語が邦画には少ないように感じる。最初の晩餐

  • LIFE!

    ★★★★☆2013年/アメリカ監督/ベン・スティラー地下の写真室からウォルターは飛び出していく。伝説のカメラマンに会うために。人は思い立てばいつでも冒険の旅に出られる。何度見てもそのメッセージに勇気づけられる。コロナ禍の今見るとなおさら旅の郷愁にかられる。ひと目で世界的冒険家と納得させるショーンペンの佇まいにやられる。いろんな映画でボウイが使われるけど、本作のSpaceOddityが一番好き。酔っ払いの運転するヘリコプターが今飛び立とうとしている。そこで思いを寄せるシェリルがウォルターの空想の中で歌い出す。GroundControltomajorTom…。ウォルターがジャンプする。なんてエモーショナルなシーンなんだ。LIFE!

  • プロミシング・ヤング・ウーマン

    ★★★★☆2020年/アメリカ監督/エメラルド・フェネル夜毎、男たちに復讐?私には自傷行為に見える。胸や局部を毎日触れさせるのだよ、シラフで。来る日も来る日も体目当ての男に己の体で警鐘を鳴らす。次のニーナを生み出さないために。緩やかな自殺行為のようだ。映像と音楽はとびきりポップ。そうじゃないと辛すぎるキャシーは自身の心と体を犠牲にし、赦しを請う者には赦しを与える。キリストみたいだ。ラストに向けての怒涛の展開。現実はそう簡単じゃない。でも、その憤りを現実に持ち込むんだという叫びを聞いたよう。この脚本は魂削らないと書けない。完敗。プロミシング・ヤング・ウーマン

  • ブラス!

    ★★★☆1996/イギリス監督/マーク・ハーマン鉱山閉鎖の危機に直面しながらも、ブラスバンド大会に賭ける男たち描く。リトルダンサー、キンキーブーツなどイギリス炭鉱町物にはハズレがない。ベタな展開ではあるが、バンドが繰り広げる数々の楽曲に心揺さぶられる。そしてなんといっても若いユアンがかわいい。ブラス!

  • エイス・グレード

    ★★★★2018年/アメリカ監督/ボー・バーナム無口賞(ひどい賞だ)に選ばれるほどクラスに馴染めないケイラ14歳。カメラは彼女のうつむきがちに歩く丸まった背中を追い続ける。まだまだ子供、でも背伸びをしたい年頃。自分晒しが日常の現代の中高生、そのもどかしく切ない様をリアルに描く秀作。高校生のお姉さんと友達になれたのに、辛い出来事が起こる。ケイラの性格をわかって漬け込む男の加害性を描くこの監督、信用できる。そして竜そばで「まずは父と対話じゃないのか」と憤慨してたら、まさに本作はそれがターニングポイントとして描かれており、嬉しくて膝を打った。エイス・グレード

  • マスター・オブ・ゼロ シーズン3

    ★★★★NetflixS2まで見ていた人間からすると、違うドラマ始まった?と思うほどの違いだが、その向こうに広がる豊潤な世界。日常の幸福、恋の哀れ、妊活の厳しい現実。全てがゆったりと、実にゆったりとした時間と共に描かれる。レズビアンカップルの数年に渡る愛と葛藤の物語。もはや現代の映画では無理かも知れないと思える贅沢な時間の使い方。ひと気のないコインランドリーでただ機械音がするだけのシーン、愛し合う2人が肩を抱き合い牧場を横切るロングショット。体外受精に取り組むアリシアが母に電話をかけるシーンも胸に迫る。心のひだに触れるような繊細な演出が見事。マスター・オブ・ゼロシーズン3

  • プラットフォーム

    ★★★2019年/スペイン監督/ガルダー・ガステル=ウルティア人間の強欲さがこれでもかと続く、想像以上の地獄絵図ホラーだった。食事量は人数分揃っているはずなのに全員に行き渡らないと言うのは共産主義批判とも受け取れるし、様々な見方が可能。縦構造の牢獄のビジュアルがインパクト大。しかし、こんなに怖いと思わなかったよー。プラットフォーム

  • 本当の僕を教えて

    ★★★★2019年/イギリス監督/エド・パーキンスNetflixドキュメンタリー事故で記憶を失った青年。双子の兄は家族の物語を一から教えた。しかし母の死で築き上げた物語が崩れる…兄が傷つくとわかっていても執拗に真実を迫る弟。35年の時を経て対峙する兄。あまりに暴力的な自分探し。人はそれほどまで真実を求めるものなのか。兄の態度を見るに、只ならぬ秘密があるのはすぐに想像できる。この作品は観客自身も「真実が知りたい」欲望と「知らない方が彼のためだろう」という思いの狭間でギュインギュインに揺さぶられる。この感覚、あれだ。「ザ・バニシング消失」。人間の知りたい欲求は底なし沼だな。本当の僕を教えて

  • FYRE 夢に終わった史上最高のパーティー

    ★★★☆Netflix東京オリンピックを前に状況が酷似と話題の作品を鑑賞。リゾートで豪華フェスをぶち上げるも、絶対無理やん、アカンやんのつるべうちに誰もストップかけられず結局開催して地獄の様相。馬鹿騒ぎ一団だが多くの教訓がここにある。個人発信でもその執着で巨大イベントになると誰も止められない。この場合、投資家の存在がキーだ。投資と回収。この命題に囚われると後には引けない。オリンピックも然り。開催後に再び感染拡大した時、なぜ止められなかったかと自分を責めるのかと思うとゾッとする。ビリーの周辺にいる奴らは私たちだFYRE夢に終わった史上最高のパーティー

  • バクラウ 地図から消された村

    ★★★★2019年/ブラジル・フランス監督/クレベール・メンドンサ・フィリオジュリアノ・ドネルス突然地図から消えた村で惨劇が始まる。攻撃者は誰か…。まずバクラウという村の不思議な魅力に引き込まれる。土着文化残る風習に大音量のDJ、売春トラック、不思議な薬。ただ者じゃない感が独特。舐めてた相手が実は系なんだけど、まるで正体が読めない面白さ。アメリカの南米への軍事介入等のメタファーという仕掛けも面白いが、終盤近く、水の枯れたダムが映し出されるため、ブラジル自身が抱える問題も織り込まれていると推測できる。奇天烈モンド映画というベールを纏った痛烈な資本主義批判映画ではないか。しかもそれらを説明しすぎない手際が見事。バクラウ地図から消された村

  • スキャンダル

    ★★★★2019年/イギリス・アメリカ監督/ジェイ・ローチFOXニュースセクハラ事件の映画化。上昇志向のある女性につけ込むのが、卑怯。ジョンリスゴー、損な役回りだがハマってる。最初の告発者がニコールキッドマンでそれに続くのがシャーリーズセロン。2大女優の並びで絵的に盛り上げたい所を敢えて我慢している。抑えた演出がいい。1年間にわたる用意周到な準備がなければ告発できない。その1年間にどれだけの人が新たなセクハラを受けたとしても、それだけの準備がいるという辛い現実。誰かが、どこかで止めなければならなかったのだ。しかし、どうやって?もし私があの役員室の入口受付に座る秘書だったらと思いを馳せてしまった。スキャンダル

  • おとぎ話みたい

    ★★★★2014年/日本監督/山戸結希ピナバウシュを知っててメルロ=ポンティをお勧めしてくれる先生に恋する女子高生。中高年の私からしたらもう、むず痒いのなんの。お尻がこそばくなってくる。物語も映像もいろんなものがギリギリの境界線だが、その危うさが魅力。いや、魔力。主演の趣里がすばらしい。監督と作品を切り離して見られるものもあるが、本作はそうはいかない。撮影は山戸監督が大学在学中とのことで当事者に限りなく近いからこそ、撮れる作品だろう。思春期の女子高生の溢れ出る自意識をここまで、てらいもなく切り取れる人はそういない。おとぎ話みたい

  • サーヴァント ターナー家の子守

    ★★★AppleTVあることで子を亡くした女性。傷ついた心を癒すために赤ちゃん人形を世話している。が、彼女はそれを本気で自分の子供だと思うように…。Mナイトシャマラン製作総指揮ということで期待したが、謎ばかり撒き散らしてちっとも回収せず。全く好きになれなかった。とにかく赤ちゃん人形がリアルで怖い。カメラワークもクールだから映像としての引きも強い。が、全てが思わせぶりで話がつながらないのはいかがなものか。普通気づくだろ、普通止めるだろの連続で見ていても疲れた。S1の謎がS2ではっきりするかと我慢して見たがそれもなし。多分S3は見ないな。サーヴァントターナー家の子守

  • オクトパスの神秘 海の賢者は語る

    ★★★☆2020年/アメリカ監督/ピッパ・エアリックジェームズ・リードダイオウイカが大ヒットしたように海洋生物の生態というのは本当に興味深くて、天敵から逃げるタコの映像は実にドラマチック。それは大いに見る価値アリなんですが。心に問題を抱える主人公の再生という点においては、甚だ違和感を覚えて入り込めないのだった。その理由は彼を撮影する第三者の存在。オレは心に傷を追って海に入るようになった…と言われても彼の背中を追い続けるカメラがあるからね。最初からそういうストーリーでは?という居心地の悪さが終始つきまとう。タコの生態を追った映像は本当にすごいんだけど。オクトパスの神秘海の賢者は語る

  • ジュディ 虹の彼方に

    ★★★★2019年/イギリス監督/ルパート・グールド公演初日の「バイマイセルフ」の凄みにやられた。レネーのオスカー文句なし。晩年のロンドン公演を軸に天才シンガーの孤独と苦悩と少女時代の恐るべきエピソードを織り込む構成が見事。業界に、親に、狂わされた一人の天才は最後まで魂を振り絞り、歌いあげる。長年のファンであるゲイカップルの存在が効いている。あなたは孤独じゃない。あなたの歌によって、生きる希望を得た人はたくさんいる。そんなメッセージはしっかりとジュディに届けられたのだ。ジュディ虹の彼方に

  • クレイジー・リッチ!

    ★★★★2018年/アメリカ監督/ジョン・M・チュウゴージャスな生活にめくるめくファッションとゲイのアドバイザー。これSATCじゃん!音楽や映像もSATC印満載でなるほど当たった理由がわかった。彼の母とのケリのつけ方が中国由来の○○というひねりも面白い。清々しいほどのどんちゃん騒ぎ。こんなの映画でしか体験できない。クレイジー・リッチ!

  • 不気味なものの肌に触れる

    ★★★☆2013年/日本監督/濱口竜介異世界から来たような染谷将太の存在感がすばらしい。川の底、古代魚、触れそうで触れないダンス。心の奥底に秘めた触れたい欲望は打ち上げられた魚が草むらで跳ねているようだ。エロティックな佇まいや湿度を感じる映像が唯一無二。不気味なものの肌に触れる

  • おやすみ、また向こう岸で

    ★★★☆単発ドラマポリアモリーに着想を得たという男女3人の不思議な関係を描く。24分の中で描かれる軽妙な台詞のやり取りと意外な展開。結末を知るとタイトルの意味も味わい深い。男女3人の恋愛模様は数あれど、いかにも21世紀な新しさ。実に面白かった。長編で見たい。おやすみ、また向こう岸で

  • Arc アーク

    ★★★2021年/日本監督/石川慶遺体を美しいまま保存するプラスティネーション技術とそれをアートのように仕上げるボディワークスの独創的な表現には惹きつけられた。しかし、この独創性が仇となったか、前半と後半で断絶されたような感。説明を排除した静かな佇まいは理解できるが、もう少し感情的に揺さぶられたかった近未来のアーティスティックな表現は監督の感性が存分に活かされ非常に面白い一方、残念なのは記者会見のシーン。どうして邦画は会見シーンがこうもチープになってしまうのだろうか。世界観を維持するディテールの大切さを感じる。様々な役割を演じ分ける芳根京子の魅力は堪能。ただ、人間の苦悩を台詞ではなく演技で納得させるという点においては、蜜蜂と遠雷における松岡茉優のすごさを改めて思い知らされた。Arcアーク

  • アメリカン・ユートピア

    ★★★★★2020年/アメリカ監督/スパイク・リー最高!キャッチコピーの「一生に一度の至福の体験」は間違いではない。一人ひとりのパフォーマーがキレキレの演奏で極上の音楽をもたらす。ワイヤレス環境で縦横無尽に舞台を動き回る、その美しさ。斬新な演出、ダンス、照明。まさに総合芸術。Onceinalifetimeで号泣。正面、俯瞰、ロング、クロースアップ。ライブの臨場感をビシバシ伝えるカメラがすばらしい。劇中カメラは全く映り込まず、没入感も相当なもの。ほとんどライブに行けない日々が続く今、こんなすばらしいものを見せてもらえたことに感謝。最新の技術がもたらしてくれる最高のライブ体験。必見。アメリカン・ユートピア

  • 判決、ふたつの希望

    ★★★★☆2017年/レバノン・フランス監督/ジアド・ドゥエイリ配管工事の水がかかった、かからないのいざこざが国を揺るがす政治闘争へと発展。身近な話題から切り込み、中東が抱える宗教・政治の闇を万人に理解させ、ハラハラさせる脚本が見事。レバノン?ようわからん…な人でも問題なしの秀作。裁判映画でこれほど高揚したのは久しぶりだ。中東問題や難民についての知識が乏しい自分でも最後までほとんど何の疑問も持たずに追うことができた。とにかく脚本がすばらしい。「謝れ」「いや、謝らない」という一見大人気ない行為の裏側。後半の裁判劇で明かされる意外な真実。根深い政治問題だがエンタメ作品としても一級品。判決、ふたつの希望

  • ストップ・メイキング・センス

    ★★★★1984年/アメリカ監督/ジョナサン・デミ一台のラジカセからリズムが流れる。1人また1人とメンバーが現れ、やがて狂おしいほどに見る者を高揚させる凄まじいグルーブ。デビッドバーンのパフォーマーとしての天才性をとことん見せつける。なぜ人は音楽を聴くのか。その理由がここにある。ライブ映画の金字塔。リアル世代だが当時の私はトーキングヘッズに対してはその哲学的で抽象的な詩の世界やビジュアルイメージも相まって、スカしたバンドというイメージがあった。しかし本作公開時にその先入観は打ち砕かれた。久しぶりに見直したがあの時よりもエモいこの感情はなんだ。2021の今、バーンの詩が胸に来る。ストップ・メイキング・センス

  • 記者たち 衝撃と畏怖の真実

    ★★★☆2017年/アメリカ監督/ロブ・ライナーイラクに大量兵器はなかった。大手新聞が政府見解を垂れ流しにする中、地道な取材で隠された真実を暴く。911が起きた直後からイラクを攻撃する(したい)という説が政府内で発生していたという事実に驚愕。しかし映画的には実にあっさりとした進行で物足りなさも残った。記者たち衝撃と畏怖の真実

  • 瞳の奥に

    Netflixドラマスティーブンキングが原作を絶賛という触れ込みで見たけど、残念案件。ラストのオチはそれなの?というちょっとした驚きはあるけど、謎を引っ張るばかりでドラマとしての魅力が乏しい。悪夢とか精神病院とか、それらしいアイテムを散りばめるだけじゃあイカンでしょ。瞳の奥に

  • his

    ★★★★2020年/日本監督/今泉力哉ゲイの恋人を通じて描く、子育てとは?家庭とは?という普遍的な物語。田舎だからこそ偏見もあるし、そう上手くはいかないだろうと思うが、それでも希望を持ちたいという前向きな展開が心地いい。女だって子育てはうまくいかないことにもスポットを当てる、その公平な視点も好きだ。「his」というタイトルに惹かれる。彼の子供、彼の元妻、彼の悲しみ、彼の喜び…。それらを共有することから始めようという意味だろうか。いろいろと想像して楽しんでしまう。子役の女の子の素直な演技が良かった。子供の素直な言葉に大人はいつもハッとさせられるもんだよね。his

  • ボクらを見る目

    ★★★★Netflix5人の黒人少年が強姦事件の冤罪で逮捕される。こんな無理筋が通るのかという、白人警官による取り調べ中の脅しと自白強要。少年ゆえに大人の言うことに従ってしまう、その先の地獄たるや。これが実話なのかと何度も目を疑った。少年期、青年期を演じるキャストも熱演。原題は「WhenTheySeeUs」。黒人の仕業に違いないと決めつける先入観、黒人のせいにすればいいという身勝手さ。常にそうした悪意に晒され続ける彼らの苦悩が胸に迫る。無実を知りながら「白人警官の言うことを聞いて刑務所に入った方がいい」と言う親もいる。その彼らを取り巻く環境があまりに悲しい。ボクらを見る目

  • わたしたち

    ★★★★☆2016年/韓国監督/ユン・ガウン小学4年の少女たちの人間模様。いじめ、仲間はずれ、嫉妬、喧嘩。しかし、一つひとつの体験が外側の世界に通じる扉になる。友達間のよくある話なのに実にスリリングな脚本。ミサンガ、マニキュア、絆創膏などの子供アイテムが見事に彼女らの心情を表現し、物語をドライブさせる。傑作。カメラは常に主人公のソンを捉え続ける。尺の半分以上と言っても過言ではなかろう。そのソンの表情。喜び、翳り、憂い、気づき。微細な表情の変化で、物語が進んでいく。実に高難度技。なのに、全く気取らず我々の少年少女時代を回想せずにはいられない温かみも持ち合わせる。すばらしい作品。わたしたち

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