嘘(R18)
【嘘】そこに行くのは、もう何度目だろう。古びた低層建築ばかりの町の一角に数年前突如できた外資系の6つ星ホテルが、例の客の常宿だった。ガラス張りの壁を段差をつけながら横に連ね、そうすることによって弧を描かせたブロンズ色の建物で、地下鉄の出口から、カラオケ屋の毒々しいネオン看板の向こう側に聳えるそのモダンなビルを眺めるたび、ホンビンは昔本で読んだバベルの塔を連想した。名前もロクに知らないそのホテルに、彼は屡々呼び出された。洗い晒しのグレイのフーディーに薄青のジーンズを穿いたホンビンは、流線形の黒い外車に群がるドアマンを遠目に見ながらメインエントランスの前の道を通り過ぎ、角を曲がってホテル内に店を構える花屋のウィンドウ隣の小さな扉から中に入った。都会的な丸いフォントで店名の書かれた花屋のガラス壁の向こうには、彼の住む...嘘(R18)
2019/11/04 04:02