りんのショートストーリー https://rin-ohanasi.blog.ss-blog.jp/

気軽に読めて笑えるショートストーリーです。名作パロディーやファンタジーなどが中心です。

お話を作るのが大好きで、こっそり書き溜めていたのですが、夫と子供に見せたところ、面白いからブログに載せたら、と言われて、思い切って作っちゃいました。 重い話はありません。 楽しいショートストーリーが中心です。 お茶でも飲みながら読んで欲しいです。

りんさん
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2009/11/29

りんさんさんの人気ランキング

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  • アロハ・オエ

    おばあちゃんがフラダンスを始めた。 「75歳のフラガールよ」なんて言って張り切ってたけど、初めてのステージで大失敗をしたらしい。 初めてのステージで緊張したおばあちゃんは、よろけてとなりの人にぶつかって、将棋倒しにみんなが転んだ。 「見てられなかったわよ」とママが言った。 フラダンスじゃなくて、フラフラダンスだって。 そんなに面白いことがあったなら、見に行けばよかった。 ところが、笑い事じゃなかった。 おばあちゃんは、その日からずっと塞ぎ込んで、フラダンスにも行かなくなった。 仲間が誘いに来ても「ごめんなさい」と謝るばかり。 よほどショックだったみたい。 いつも明るいおばあちゃんが落ち込んでいると、家の中がどんより暗い。 「おばあちゃん、フラダンスやめちゃうの?」 「もう行けないわよ。みんなに迷惑かけて」 「誰にでも失敗はあるよ。あたしなんか期末の英語..

  • アロハ・オエ

    アロハ・オエ

    おばあちゃんがフラダンスを始めた。 「75歳のフラガールよ」なんて言って張り切ってたけど、初めてのステージで大失敗をしたらしい。 初めてのステージで緊張したおばあちゃんは、よろけてとなりの人にぶつかって、将棋倒しにみんなが転んだ。 「見てられなかったわよ」とママが言った。 フラダンスじゃなくて、フラフラダンスだって。 そんなに面白いことがあったなら、見に行けばよかった。 ところが、笑い事じゃなかった。 おばあちゃんは、その日からずっと塞ぎ込んで、フラダンスにも行かなくなった。 仲間が誘いに来ても「ごめんなさい」と謝るばかり。 よほどショックだったみたい。 いつも明るいおばあちゃんが落ち込んでいると、家の中がどんより暗い。 「おばあちゃん、フラダンスやめちゃうの?」 「もう行けないわよ。みんなに迷惑かけて」 「誰にでも失敗はあるよ。あたしなんか期末の英語..

  • 行列の女

    行列の女

    信号待ちの車の中から、ラーメン屋の行列を見ていた。 人気のラーメンに、20人ほどが並んでいる。 その中に、サキがいた。思わず「ウソだろ」とつぶやいた。 サキは僕の元カノで、行列が大嫌いだった。 「ラーメン食べるために並ぶなんてバカみたい。絶対に嫌よ。行列に並ぶくらいならカップ麺を食べるわ」 そう言っていたサキが行列に並んで、楽しそうに笑っている。 隣にいるのは新しい彼だろうか。背の高い男と寄り添っている。 クラクションを鳴らされて、車を発進させた。 別れて3年。僕たちはとてもうまくいっていたけど、突然フラれた。 行列も人混みも嫌いなサキに合わせて、デートはもっぱら家。 テレビで行列の店やイベントを見て「うんざりするわ。バカみたい」と顔をしかめたサキに、「本当にそうだね」と一緒に笑った。 そんなサキが、あんなに楽しそうに行列に並んでいたなんて。 人って変わるん..

  • 赤ずきんちゃん、マジで気を付けて

    赤ずきんちゃん、マジで気を付けて

    どうも、あたし、赤ずきん。 あたしとおばあさんが、オオカミに食べられたのに生きて帰ったあの話。 今じゃすっかり有名になって、あたしはまさに時の人。 雑誌の取材やテレビに引っ張りだこなの。 あたしが歩いたあの森は、聖地巡礼とばかりに人が集まって、屋台やキッチンカーまで出る始末よ。 どこにいてもサインを求められて大変なの。 もちろん、中にはひねくれたアンチもいるわ。 ワイルドで野蛮なオオカミ推しもいるの。 「オオカミ様が沈められた川よ」なんて言いながら手を合わせてる。 別にいいけどね。 可哀想なのはお母さんよ。 子どもを一人でお遣いに出したことが、倫理的にどうなの?って言われてる。 そのせいであたし、一人で外出禁止になっちゃった。 おまけにあの森、子どもだけで歩いちゃいけない決まりが出来たの。 おばあさまに会いたいなあ。あの森、通りたいなあ。 おばあさま、毎日..

  • 桜、散る

    桜、散る

    春の嵐で、桜の花が散ってしまった。 せっかくきれいに咲いたのに。 もっと咲いていたかっただろうに、無情にも儚い命。 だけどそれは、桜に限ったことではない。 仕事を突然クビになった。 「ごめんね。上の判断だからさ」 上司は気の毒そうに言いながら、どこかホッとしたような顔をした。 リストラの噂があったとき、切られるのは私だろうと思った。 子どものことで休みも多かったし、残業は出来ない。陰で色々言われていたのも知っていた。 頑張ったのに。スキルは私の方が絶対上なのに。 時代は変わっても、女が普通に働くのって難しい。 「子どもが小学校に上がるまでは、家にいてあげたほうがいいわよ」 なんてことを言う人は、いまだに多い。 だったら毎月、無条件で10万円援助してくれますか、って話よ。 マイホームだって欲しいし、子どもの学費だって貯めなきゃいけないんだから。 ああ、明..

  • 夜鳴き猫

    夜鳴き猫

    午前二時に、聞こえてくるニャルメラの音。 ああ、今日も来た。夜鳴き猫の屋台。 そうなの、この時間になると私、無性に猫を撫でたくなるの。 パジャマのまま、サンダルを突っかけて外に出た。 「おじさん、夜鳴き猫一丁」 「へい、毎度」 おじさんが、屋台の下から黒い猫を取り出して、私の手に乗せる。 黒い猫は、私の胸に顔をうずめて「にゃー」と鳴く。 ああ、なんて幸せ。なんて癒されるひと時。 ニャルメラを聞いた客が、次々とやってくる。 「おじさん、私も夜鳴き猫」 「私もお願い」 私と同じように、一人暮らしでペット禁止のアパートで暮らす女たちが、夜鳴き猫を求めてやって来る。 みんな猫を胸に抱き、その体を優しく撫でる。 猫は気持ちよさそうに甘えてくる。 ああ、なんて可愛い。なんて愛おしい。 酔っ払いの男がやって来た。 「おやじ、ラーメン一丁」 ラーメンの屋台と勘違..

  • 発売になりました

    発売になりました

    「ラストで君はゾッとする」PHP研究所 ついに発売になりました! 先週見本が届いて、いち早く読むことができました。 私が書いた「ぬいぐるみ供養」が、掲載されています。 よかったらぜひ、手に取ってみて下さい。 子ども向きだけど、どのお話もゾクッとなります。 さあ、雨が止んだら、本屋さんに行こう!!

  • 代わってよ

    代わってよ

    「代わって。ねえ、代わってよ」 真夜中に声がした。それは、誰かの声じゃない。 僕の声だった。 「代わって。ねえ、代わってよ」 怖くて、目が開けられない。耳をふさいでも無駄だ。 だって、声は僕の体の中から聞こえている。 「代わって。ねえ、代わってよ」 「いやだよ」と答えてみた。 「ケチだな」と声がした。不思議だ。僕の中で、僕と僕が会話している。 怖くなって起き上がって、おかあさんのところに行った。 「怖い夢を見たのね」 おかあさんは優しく背中を撫でてくれた。もう声は聞こえない。 僕は安心して眠った。 翌朝、おばあちゃんに話した。 「その子は、おそらく双子のかたわれだ」 おばあちゃんはそう言って、仏壇に手を合わせた。 「かたわれ?」 「もうひとりの、おまえだよ」 「もうひとりの、僕?」 「おまえは、双子で生まれるはずだった。だけど、どういう..

  • ママの第二ボタン

    ママの第二ボタン

    ブラウスのボタンが取れちゃったから、似たようなボタンを探そうと思って、ママの裁縫箱を開けた。 ママの裁縫箱には、とにかくたくさんのボタンが入っている。 その中に、男子学生の制服のボタンがあった。 「ママ、これって、第二ボタンってやつ? 卒業式で彼氏からもらうやつ?」 「あー、そうだね。制服の第二ボタンだね」 「誰にもらったの? JKだったころの彼氏?」 「憶えてないわね」 「うそ。今でも大切に取ってあるのに、憶えてないの?」 「憶えてないわよ。そんな昔の話」 ママの初恋の人って、全然想像できないんだけど。 パパとは、30歳を過ぎてからお見合い結婚したって聞いた。 ママは年頃になっても全然恋人が出来なくて、おばあちゃんの方が焦って相手を探したそうだ。 当たり前だけど、ママにもちゃんと初恋があったんだよね。どんな人だろう。 ママは面食いじゃないよね。だってパパを選..

  • 家電ハラスメント

    家電ハラスメント

    私、疲れてます。 毎日家電に振り回されてます。 まずはホットプレート。 ピンク色でとても可愛いんです。マカロンみたいな可愛い蓋で、取っ手はイチゴ。 ショップで一目惚れして買いました。 ところがホットプレートはわがままで、パンケーキしか焼かせてくれないんです。 お好み焼きや焼きそばは、電源切って全力で拒否。 「おとぎの国には、お好み焼きも焼きそばもないわ」 餃子なんか焼こうとしたら、蓋で手をはさまれます。 「ここはおとぎの国よ。ニンニクの匂いがついたらどうしてくれるの?」 アリスだってシンデレラだって、目の前に餃子があれば食べますよね。 ああ、一度でいい。ニンニクたっぷりのタレで、焼き肉食べたーい! それから電子レンジです。 すぐにキレて、口うるさいんです。 コンビニ弁当を温めようとした時です。 「はぁっ?なんでコンビニで温めてもらわないの?おれ今休..

  • 小学生、浦島太郎

    小学生、浦島太郎

    はじめまして。浦島太郎です。 今日からこのクラスに編入しました。 特技は、魚を捕ることです。 よろしくお願いします。 僕は約600年前からタイムスリップしてきました。 海の中にある竜宮城っていうところから戻ったら、時代が大きく変わっていたのです。 親もいなくて、家もなくて、村はすっかり変わっていました。 途方に暮れていましたが、村……いや、この町の人はなぜかみんな僕のことを知っていました。 「浦島太郎さんでしょ」 「カメを助けて竜宮城に行った浦島さんよね」 僕は、意外と有名人でした。 町の人はみんな親切で、いろいろ世話をしてくれました。 600年の間に、この国が大きく変わったことを教えてくれました。 僕が学校へ行っていないことを知って、小学校から学ぶように勧めてくれました。 年齢は皆さんよりずいぶん上ですが、仲良くしてください。 「はい、みんな拍手..

  • 不快な通勤快速

    不快な通勤快速

    電車が揺れるたびに、コーヒーの空き缶が右へ左へゴロゴロ転がった。 今日の電車は、珍しく空いている。 私の右隣に座る女が言った。 「非常識ね。電車の中に空き缶を捨てるなんて。飲み終わって邪魔になったからって、平気でポイするなんて人間のクズよ」 私の左隣に座る男が、それに反論した。 「言い過ぎ。捨てたかどうかわからないよ。足元に置いたら転がっちゃったのかも。何でも悪く取るのは君の悪い癖だ」 「はあ?何いい人ぶってるのよ。このコウモリ男。誰にでもいい顔するから出世できないのよ」 「君みたいに粗探しする女が、陰でお局様なんて呼ばれるんだろうな」 「粗探しなんてしてないわ。私は正義感が強いだけよ」 「あの……」と私は、両隣のふたりの顔を交互に見ながら言った。 「席、代わりましょうか?」 この二人は、同じ車両の同じドアから乗ってきたが、まるで他人みたいに私を挟んで座っ..

  • お知らせ(本が出ます)

    お知らせ(本が出ます)

    お知らせです。 3月25日に発売される児童文庫 「意味がわかると怖い3分間ノンストップショートストーリー ラストで君はゾッとする」 に、私の作品が載っています。 17の怖いお話が載っています。 ラストで君はシリーズは、小学生に大人気なので、すごく楽しみです。 近くなったら、しつこく宣伝するのでよろしくお願いします^^ 3月25日は、みんなで本屋さんに行こう!! 予約受付中です↓ https://amzn.asia/d/1LfNBB9

  • コロナ禍の恋

    コロナ禍の恋

    あの人は、病室の窓からいつも手を振ってくれた。 彼が交通事故で入院したと聞いてから、私は生きた心地がしなかった。 すぐにでもお見舞いに行きたかったけれど、コロナのせいで面会禁止。 事故でスマホも壊れたらしく、電話もメールも通じない。 心配で眠れない夜を過ごし、病院の裏庭で彼の病棟を眺めた。 命に別状はないと言っていたし、一目でも顔が見たいと思った。 そして5階の端の窓からあの人の姿が見えたとき、私の胸は大きく高鳴った。 ドキドキし過ぎて倒れそうなくらいだった。 「気づいて、気づいて」と念を送ったけれど、あの人は看護師との話に夢中で、私にまるで気づかない。 だけど逢えたことが嬉しくて、私は翌日も同じ時間に同じ窓を見た。 あの人が見えた。今日は、看護師はいない。 思い切って手を振ってみた。 「気づいて。私はここよ」 念が通じて、あの人が私を見て、少し戸惑いなが..

  • ライバル

    ライバル

    正蔵さんと大助さんは、隣同士の幼なじみ。 同じ日に生まれ、生まれたときからのライバル関係だ。 どちらが先に歩くか、どちらが先にしゃべるか。 学校へ上がれば成績、スポーツ、ラブレターの数さえも競い合うようになった。 同じころに結婚して息子が生まれると、今度は息子同士を競わせた。 そして月日は流れ、今度は孫の番だ。 「おおい、香里、香里はどこだ」 「どうしたの、おじいちゃん。ここにいるよ」 「香里、隣の沙恵が梅むすめに選ばれたぞ」 「梅むすめ? ああ、梅まつりのキャンペーンガールね」 「どうして正蔵の孫が梅むすめなんだ。香里の方がずっと可愛いじゃないか」 「おじいちゃん、私は応募してないよ。興味ないし、やりたくないよ」 「いや、今からでも遅くない。市長に掛け合ってやるから、梅むすめやりなさい」 「やだよ。別にいいじゃん。やりたい人がやれば」 「それじゃあ隣に負け..

  • 龍の子ども

    龍の子ども

    結婚して7年経ちますが、なかなか子宝に恵まれません。 夫とふたりで出掛けた初詣の神社で、私は熱心に祈りました。 「どうか今年こそ、子どもが授かりますように」 夫が毎年欠かさず参拝するこの神社は、龍神様を祀っています。 急に辺りが暗くなりました。 多くの参拝客で賑わっていたはずの拝殿から人が消えました。 何が起こったのでしょう。 「おまえに子どもを授けてやろう」 暗やみから声がしました。大地を這うような恐ろしい声です。 怯える私の前に、大きな龍が現れました。血の塊みたいな赤い目で私を見ました。 「願いを、聞いてくださるのですか?」 「ああ、授けよう。ただし生まれてくる子は龍の子どもだ。大切に育てろ」 「龍の子ども? それはどういうことですか」 龍は、私の問いには答えずに消えてしまいました。 気がつくと私は、神社の隅でうずくまっていました。 「大丈夫? 貧..

  • おとぎ話(笑)34

    おとぎ話(笑)34

    <泣いた赤鬼> 青鬼のおかげで人間と仲良くなれた赤鬼の元に、村役場の役人がやってきました。 「赤鬼さん、あなたを人間として住民登録することになりました」 「本当ですか」 「はい。これ、住民票です」 「ありがとうございます」 「これ、住民税と固定資産税の納付書です」 「これ、国民年金の納付書です」 「NHKの視聴料お願いします」 「あっ、赤鬼さん、泣いてる」 「人間になれてうれしいのかな?」 ……違うと思う。 <シンデレラ> お城の舞踏会に行きたいシンデレラの前に、魔法使いが現れました。 ボロボロの服を素敵なドレスに カボチャを馬車に ネズミを馬に変えてくれました。 「さあシンデレラ、舞踏会にお行きなさい。ただし午前0時に魔法が解けるから、それまでに帰るのよ」 「はい、わかりました。ところで魔法使いさん、ひとつだけ質問があります」 「..

  • 饅頭屋のクリスマス

    饅頭屋のクリスマス

    小さな駅前の商店街。 昔は12月になると、街路樹にキラキラのイルミネーションを飾ったものだ。 駅からまっすぐ光のトンネルを歩くみたいだった。 あの頃は賑やかだった。 ケーキを売る声、おもちゃ屋の前で立ち止まる子ども、揚げ物や総菜のいい匂い。 今じゃすっかり寂れて、3分の2はシャッターを閉じたままだ。 私は先祖代々続く饅頭屋を、細々と続けている。 嫁に来た頃は忙しかったけど、今は常連客しか来ない。 閉店は午後7時。また売れ残っちゃった。 夫はさっさと奥に引っ込んで、晩酌を始めている。 「やれやれ」と片付けをしていると、ひとりの男が飛び込んで来た。 「もう終わりですか?」 「はい、この通り、もう閉店時間です」 「饅頭一個だけでも売ってくれませんか。朝から何も食べてなくて、もうフラフラで倒れそうなんです」 男は大げさに腹を押さえた。 「それなら饅頭なんかより、ご..

  • やさしいトナカイさん

    やさしいトナカイさん

    「ああ、今年も無事にプレゼントを配り終えたな、トナカイくん」 「はい、サンタさん、お疲れさまでした」 「上がって一杯やっていきなさい」 「でも、ソリがありますから。飲酒運転になってしまいます」 「泊って行けばいいだろう。そうだ、フカフカの最上級の藁を買ったんだ。君がぐっすり眠れるようにな」 「それはありがとうございます。では、お言葉に甘えて」 「おおい、今帰ったぞ。トナカイくんに酒を出してくれ。去年誰かにもらった高級なウイスキーがあっただろう」 「すみません、奥さん」 「いいんですよ。そろそろ帰るころだと思って、用意しておきました」 「おお、これは旨そうなローストビーフだ」 「クリスマスですから、奮発しました。では、ごゆっくりどうぞ」 「トナカイくん、君とも長い付き合いになったな」 「そうですね。サンタさんと過ごすクリスマスが当たり前になってますね」 「し..

  • 帰郷の理由

    帰郷の理由

    15年ぶりに、故郷に帰ることにした。 東京で就職してからは忙しさもあったけど、「結婚はまだか」と言われるのが嫌で帰らなかった。 「お母さん、明日帰るから」 「えっ、何で帰るの?」 「何でって、何でもいいでしょう」 「良くないでしょう。何で帰るのよ」 「なに、迷惑なの?」 「違うよ。何で帰るのか聞いてるだけよ」 「もういい。とにかく帰るから!」 ああ、何だか拍子抜け。 娘が実家に帰るのに理由が必要? しかも15年ぶりに帰る一人娘に、第一声がそれ? まあ、帰らなかった私も悪いけど「待ってるよ」くらい言っても良くない? そもそも理由なんてひと言じゃ言えない。 40歳手前で10年付き合った男にフラれて、仕事に生きようと思ったら新任の上司とそりが合わずに転職。 転職先は信じられないブラック企業で即辞表。 おまけにアパートのオーナーが変わって、立ち退きを要求..

  • ピンポンダッシュ

    ピンポンダッシュ

    北風の通学路。 毎日のようにピンポンダッシュをしていく悪ガキがいる。 「ピンポ~ン」 ほーら、来た。何も玄関まで出ていくことはない。 窓から顔を出して「こらっ」と叱りつけてやる。 悪ガキは、憎たらしく舌を出して走って行く。 どこの子どもか知らないけれど、何が楽しいのかね。 老人ばかりの集合住宅で独り暮らしだ。 定期的にケアマネージャーが様子を見に来てくれる。 子どもたちに迷惑を掛けたくないから、半年前からここで暮らし始めた。 そんなある日、隣の家から怒鳴り声が聞こえた。 外に出てみると、いつもの悪ガキが隣のじいさんに捕まっていた。 「どうかしたの?」 「このガキが、用もないのにチャイムを鳴らして逃げるところを捕まえたんだ」 悪ガキは、ばつの悪そうな顔で縮こまっている。 「悪かったねえ。その子はうちに用があったんだよ。間違えて隣のチャイムを鳴らしちまった..

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