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2005/05/05

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  •  観戦

    観戦

      地方のスタジアムで、ルールのよくわからないスポーツの試合を僕は観ている。  とりあえず、青いユニフォームを着た選手の応援をすることにした。(ちなみに選手は数え切れないくらいいて、みんな違う色のユニフォームを着ている。)  観客席で撮った自撮り写真を友達に送り、これって何の試合なんだろうねとついでに訊く。   ...

  •  溶けたチョコ

    溶けたチョコ

      ディーラーの握り拳の中に4つの数字がある。サイコロを転がして出した数字とは一致しない。友人たちはまた全部外した。 「いつかこれで大金を手にするんだ」いつも言っている、ギャンブル好きの彼ら。  もう帰ろう‥‥   車に戻った。友人の1人が私と2人だけで話したいと言った。異議を唱えるもう1人の友人を、彼は殴って黙らせた。殴られた方はなぜか楽しそうに笑って‥‥  ‥‥ 「話っ...

  •  バス代

    バス代

      バスを降りるときに3200万円を支払うのだ。僕じゃない。僕の友達が。彼はそんな金は持ってない。支払いは待ってやってくれ、と僕も運転手に頼む。  運転手は何も言わず、ずっとバスは停車したまま。   ...

  •  地下

    地下

      地下のそのスペースにたくさんの人が集まっている。みんな友人だがもう誰が誰だか思い出せない。ある音楽が演奏されたのだった。その音楽は僕たちの記憶を洗い流していった。‥‥帰ろうかと思うが足が動かない。ここがどこなのかすらわからない。何か重大な目的があって僕たちはそこに集まったのだった‥‥  会場の出口では記憶が売りに出されている。それは1点ずつ違うCDだったり紙の本だったりする。映像データで...

  •  宝くじ

    宝くじ

      知らぬ間に宝くじが当たったようだ。きっとオンラインで買ったやつだ。大金が口座に振り込まれている。僕はその金を全部引き出し、宝くじ売り場へ向かい、そこで売られている宝くじを全部買う。そこで気づいたことがあるのだが、1億円分の宝くじの束は、1億円の札束より軽い。   ...

  •  巨大化

    巨大化

      町の上空に浮かぶ雲のベッドで僕は目覚めた。寝ているうちにまた巨大化してしまったようだ。ベッドから足を下ろすとき住宅を一棟踏み潰してしまった。  いつまで寝ぼけているんだ、と町の住人から怒りの声が上がる。  ベッド下に落したティッシュの箱を取ろうとして暴れ回り、町の一区画を更地にしてしまったところで、完全に目を覚ました。   ...

  •  東大生

    東大生

      東大生とは、東京大学の学生ではなくて、東京大学に連れていってくれる人のことだと、その人は主張し、5月のある日、東大を案内してくれたのだ。  東大は東京の大学というより寺院のようで、建物の中に入るとき、靴を脱がなければならなかった。  その日は休みなのか、構内に学生や教員の姿はなく、静かだった。  犬小屋があって、そこで白い犬が寝ていた。   ...

  •  右ハンドル

    右ハンドル

      右側通行の道路、右ハンドルの日本車とすれ違った。赤いスポーツカー。運転していた女性が歩道の僕に手を振った。僕も振り返すと、それを合図に人が集まってきた。日本語が通じるか挑戦したい、という人たちだ。日本語を学んでいる学生たちだった。   ...

  •  大猫

    大猫

      その家の玄関の前には大猫がいて、カメラを構えた僕が近寄ると後ずさった。そうか写真に撮られるのが嫌いなんだ。家に入るのに大猫が邪魔だった。どうすればどいてくれるだろうと思っていた。無事追い払うことができた。   ...

  •  L字型

    L字型

      夕日を浴びて電車が走っている。電車には人は乗ってない。ジャガイモが積まれている。収穫したばかりのジャガイモだ。  線路はあるところで直角に曲がっている。電車はそこを上手く曲がれず、脱線してまっすぐに行ってしまう。まっすぐ行った先には車庫がある。まだ車庫に入りたくない、と電車は思う。   ...

  •  雑巾

    雑巾

      陰茎は固く絞られた雑巾のようだった。僕だけじゃなくみんなのがそうなっている。ニュースでやっていた。みんなそうなってしまったなら仕方ない。  小便をするときはそれをさらにきつく絞る。残尿感があるならまだ絞れるってことだ。   ...

  •  アラーキー

    アラーキー

      この写真家を僕はアラーキーという仮名で呼ぶことにする。つまり僕が拾ったのは普通のエロ本・エロ写真集ではなかったのである。後で見てわかったが、それはあるストーカーの日記だった。彼(おそらく男だろう)は複数の女性を追いかけていて、隠し撮りした写真の他に、標的の女性の利用するバスの時刻表や、訪れるカフェのメニューなども参考資料としてあり、その本を持っているのが僕は怖くなった。   ...

  •  平行世界

    平行世界

      アイマスクの代わりに黒いタオルを巻いて寝ていた。電車の中だ。電車が駅に着いた。慌てて飛び起き、降車した。目的の駅の、1つ前だった‥‥  やってしまった‥‥降りたホームで、次の電車を待った。それはすぐ来た。先行する電車に追いつき、しばらく平行して走る。向こうの乗客たちが、僕に手を振っている。   ...

  •  高速道路

    高速道路

      高速道路を僕は歩いている。険しい山を削ってつくられた道だ。時速300キロで走る透明な車が、僕の体を通り抜ける(逆なのかも知れないが、透明なのは僕の方で)。  路肩に男の子がいる。1人で遊んでいる。危険だ。僕は声をかけた。  親に電話してやるよ、迎えに来いって言ってあげる。  おうちの電話番号、覚えてる?  迷子の男の子が教えてくれた番号にかけると、それは僕の実家だ。死んだはず...

  •  酒瓶

    酒瓶

      足元に酒瓶があった。隣のテーブルの方に蹴飛ばした。赤い酒が入っていた。僕は酒を飲まない。  隣りのテーブルで飲み食いしていたグループが僕に手を振って挨拶したのを見て席を立った。  店の外に出ると明るかった。朝だ。カネを払わずに出たことを思い出した。  僕はいろんなことを忘れていた。椅子の背には上着をかけたままだった。上着の内ポケットには財布が入っていた。   ...

  •  13歳の心臓

    13歳の心臓

      僕は窓際に追いつめられた。窓から外に逃げようと思った。  しかし窓には鉄格子が嵌めてあった。  そいつは僕の体の中から「13歳の心臓」を抜き取ろうとした。  取っても死にはしないとそいつは言うが‥‥そもそも「13歳の心臓」って何だ?   ...

  •  相思相愛

    相思相愛

      愛する女に初めてキスしようとしたとき、私は自分が女になっていることに気がついた。  私がキスをすればこの女は男になるのだろうか、と考えながらキスした。目は閉じなかった。女の変化を観察していたが、何も起こらなかった。相思相愛の私たちの未来が、少し不安になった。   ...

  •  レンタカー

    レンタカー

      女が「レストラン」と言っている。それを聞いた男が「レンタカー?」と返す。「レストラン」大声。「何借りるの?」さらに大声。「レンタルビデオ?」日本人の観光客だ、地下鉄の中。僕は用もない次の駅で降りる。   ...

  •  怪獣

    怪獣

      怪獣の背中に生えているような刺が、道路に生えていた。車は走れなくなった。ある日突然のことだった。僕は茫然と見つめた。  刺は完全な等間隔で生えていた。人工物には見えなかったが、自然の物とも思えなかった。僕はスマホを覗き込み、世界を裏で牛耳る悪の組織の陰謀ではないかという説が、狂人たちの口から、説得力をもって語られるのを待った。   ...

  •  知識

    知識

      ポケットから取り出した紙片、4つに折られていたのを開いて、約3分間、お湯に浸すのだ。  書かれていた文字が、お湯に溶け出して、紙が真っ白になったら、取り出すのだ。  文字が溶けたお湯を、僕は飲むのだ。知識が僕のものになる。   ...

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