4月19日は、私がN社に就職した初日である。危うく忘れかけていたが、その日から38年間勤めあげることになろうとは考えず、当初はもっといいところがあれば辞めようと思っていたものだ。部署は都心のM電報局で、仕事は電報の配達であつた。実は前年にもそこの内勤をしていた中学時代の友人の計らいでその局長の紹介という形で、同様の面接試験を受けており、試験官は栄養失調で青白い顔をしている私の容貌から、体力を必要とする配達の仕事はとても無理だろうとの判断され、落とされた経緯があり、2度目の挑戦であったわけである。偶々試験官が同じ方で、私を見るなり、「あれ!私、あなたとどっかで会いましたよ」と言われたので、前回も受けましたと言うと、「そうですか、でも配達の仕事は雨の日も風の日も自転車に乗って出かけなければならず、あなたにそれ...4月19日