【小説】 Useless 5
しょぼくれた男の姿は、俺が小学生の頃、姉が拾ってきた仔犬を思い出させた。父は直ぐに捨ててくるように姉に言ったが、彼女は一歩も引かなかった。このまま捨てたら死んでしまうことを分かってて言ってるんだったら、お父さんのこと一生許さない、と言い放った姉の顔は今も忘れない。その頃姉もまだ小学生のはずだったが。 俺の部屋があるフロアでエレベータが止まった。俺は降りずに再びドアを閉め、地下のボタンを押した。 男はさっきと同じ姿勢で、まだホールに突っ立っていた。 「おい、時間があるんだったら、飯に付き合え」 俺の言葉に男は怪訝そうな顔をしたが、何も言わずに後ろから付いてきた。 マンションの向かいにある中華飯店…
2018/06/16 21:32