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旅行
北海道へ旅行に行くのに僕は2泊3日でいいだろうと思っていたが、君は物足りないと言って、九州行きの電車に乗る。 九州を1ヶ月ほど見てまわった後、北海道へ行き、僕と合流して3日間過ごす計画で‥‥ 駅にわざと置き忘れたバッグ。 「やっぱりさ、一緒に九州へ行こうよ」と君は僕の手を取り誘った。 「うん」 僕たちは東京から電車に乗った。 ...
2024/05/14 17:16
紙の束
紙の束を持った外国人たちが向う先は僕たちとは反対の方角だった。(ちなみに紙は捨てるのだそうだ。) 僕は君を前カゴの中に入れ家の前まで自転車を漕いだ。 君は家の中から別の紙の束を持って出てきた。 その紙を前カゴの中に入れ、今度は君は後ろに乗った。 坂道を上って下り、交差点を渡るところで強い風が吹くと、前カゴの中の紙はすべて吹き飛ばされていた。 ...
2024/05/13 15:27
重ね着
流しにお湯を溜めた。風呂の代わりだ。そこに浸かるつもりだ。湯の中にゴキブリの死骸が浮いている。迷ったけど手でつまんで捨てた。湯が溜まってきた。 服を脱ぎ始めて気づいた。僕は何重にも重ね着をしていた。それで思い出した。昨日から風邪を引いていたのだ。寒かった。しかしブリーフを2枚重ねてはいていたのは何故だろう。 ...
2024/05/13 15:14
分数
時間になっても待ち合わせ場所にあらわれない友人をずっと待っていた。結局彼は来なかった。代わりにやって来たのは分数だった。 「分数の割り算て苦手なんだよな」と僕は言った。 「誰が割り算しろなんて言った?」 「太腿が痛くなってきちゃったよ」 「太腿?」 「さっき角にぶつけたんだ」 分数は太腿がないと言った。 「僕は太腿がないんだよ」 太腿がないってどういうこと...
2024/05/13 14:57
コタツ
コタツで横になっていると目の前の窓が開けられ、 飼い猫を抱いた隣の家のおばさんが顔を出した。 おばさんは茶トラの背中を掻いてあげている。 おばさんは僕には目もくれず猫の背中を掻いている。 「掻き終わったら窓を閉めてくれないかな」と僕は頼んだ。 窓を開ける必要もなかったはずだ。 ...
2024/05/13 14:56
メビウスの輪
僕の体のメビウスの輪のようにねじ曲がって女房とつながった部分にジェットコースターがあるのが見えて1人乗り込む。 現実にはありえないアクロバティックな体勢で家の掃除をしていたら体が元に戻らなくなってしまった廃人の僕にその体位で抱かれたいと女房は言うので とりあえず試しに1回やってみることにしたのだ。 ...
2024/05/12 15:17
ハワイ
一緒にホテルの部屋で映画を見ていた女房が暑いと言って服を脱ぎ始めた‥‥結局全部脱いでしまった。僕は驚いた。いったいいつの間にこんなに全身真っ黒に日焼けしたのだろう。ふだんから服を着ていないに違いない。彼女が服を着るのは僕の前でだけなのだ。 僕は逆に寒いと言って上着を何枚か重ね着してから女房を抱いた。その間ずっと彼女は笑いながらハワイの話をしている、ここはハワイだと。ハワイにいるのに何で...
2024/05/11 11:28
地底人
地底人を探していた僕が、ついでにモグラも探してくれと依頼された件。 「同じところで見つかると思うんだ」 「モグラを見つけてどうするの?」 「食べる」 「モグラってうまいの?」 「食べたことないのか?」 「ないよ」 「地底人を探してどうする?」 「食べるのさ」 「地底人を?」 「まさか」 「モグラって何食ってるか知ってる?」 「土だろ」...
2024/05/10 16:20
傾斜
大学で読むように薦められた2冊の本を買いに行った書店は学生でごった返していた。 そこでバイトしている1人の友人が 「例の本を買いに来たの?」 バックヤードに残っていた本を出してくれた。 その本を持ってレジに並ぶ。行列ができているのだが、書店の床はレジに向って傾斜になっている。とても滑りやすい床で、客はレジの反対側に流されてしまう。 傾斜がさらにきつくなった...
2024/05/09 23:04
子犬
子犬とあだ名されている教授が身を屈めて僕の足元を通った。 僕は教授に(人間として)きちんと挨拶しかけたが、隣にいた連れの女のコが 「超可愛い子犬!」 それで‥‥教授も犬のふりをすることにしたようだ。 「見て、しっぽ振ってる」 「子犬がしっぽ振ってるね」 「すごく可愛いね」 僕は子犬に 「もしかして人間の言葉がわかりますか?」と訊いた。 ...
2024/05/09 23:01
B1
エレベーターに乗った。下りるところは「20」と「1」と「B5」しかなかった。「B1」で下りたかったのだが。 「1」で下りて階段を使えばいいだろう。 しかしそこに階段はなかった。「B1」は地下鉄の駅とつながっていたはずなのだが。 仕方ない。僕は歩いて、外に出ようとした。けれどどこまで行っても何もなかった。そこは「1」という看板があるだけの町だった。 ...
2024/05/08 16:12
挽肉
レストランで僕は1人で食事をしている。高級店だが1人で席についている者が目立つ。彼らと同じように僕もスマホと一緒に食事をしたのだ。奇妙なレストランだった。 この後9時に約束がある。それまでの時間潰しだった。さて時刻は8時半。会計を済ませ待ち合わせの場所に向う僕を追いかけてきた店員が言った、 「お忘れですよ、厨房の冷蔵庫に挽肉を‥‥」 僕は買い物帰りだった。 ...
2024/05/08 16:10
布団干し
雨の日に、布団が干されようとしているのを、僕は阻止する。やめろ、やめろ‥‥ その布団係の、顔を見て、僕は驚いた。スマップの、稲垣ではないか。 お互い顔を知らない、文通相手に、今日初めて会う約束だ。 ちょうどよかった。その顔を貸してください、と僕は頼む。 僕の顔がスマップの稲垣だったら、どんな女のコも、喜ぶはずだ。 布団干し係が稲垣の顔をしてても、仕方ないだろう‥...
2024/05/07 23:09
自問自答
窓の外の景色はモトリー・クルーのMVのようだ。「いやただの景色」と僕。「これのどこがモトリー・クルーのMVなの?」と僕は自問した。 誰かが隣にいて、「窓が開かない」と言った。 ...
2024/05/07 16:07
世界中
僕を見た子供が「あなたは世界中でいちばん髪の長い男ね」 また別の子が「世界中でいちばん痩せた男ね」 「骸骨みたいね」 ちょっと待てよ、僕はそんなに痩せてない‥‥ たぶんそういうゲームなのだろ‥‥ また別の子がやって来て僕を見上げて「世界中でいちばんね」と。 ...
2024/05/07 01:25
ノーヘル
手に入れたばかりのでっかいオートバイに跨がり小さな町を巡回中、ヘルメットをかぶるのを忘れていることに気づいた。服を着るのも忘れていたけど、僕の姿は誰にも見えなくなっていたに違いない。だって誰も何も言わなかったから。何の注目も浴びなかったから。 自宅に戻り、バイクのエンジンを切る。オートバイに乗るのは久しぶりだった。気持ちいいけど少し怖い。それから歩いて町の中心部にあるスーパーへ行った。...
2024/05/05 15:09
腹筋
大きなバーコード・リーダーが、僕の腹筋を読み取る。「よく鍛えてらっしゃいますね」と店のお姉さんはお世辞を言う。けっこうな金額だったが、腹筋で払えてしまった。 「QRコードみたいになってるお客さんも多いんですよ」 「ん‥‥」 正に前の客がそうだった。中年の男性だった。腹筋ではなく現金で払っていた。 ...
2024/05/05 00:36
シャボン玉王子
行く手にひしめくシャボン玉を、割りながら突進する獣を見て、まだ言葉が喋れないシャボン玉王子は泣く。僕の手に抱かれた彼が創造したシャボン玉だった。 ...
2024/05/04 02:29
蒸気
途中下車した。改札で切符を見た駅員が、何か言いたそうだ。実際、言ったのだと思う。いつもとは逆に、僕は言葉がわからないふりをする。 駅に直結したデパート。僕は動く歩道に乗る。土足禁止です、と注意された。慌てて靴を脱いだ。 「靴下も脱いでください」 ‥‥床からは熱い蒸気が吹き出している。濡れた足の裏が柔らかくなる。 ...
2024/05/04 02:26
サッカー
僕らはサッカーをしていた。お屋敷の庭で。扉が開けられている、その中にゴールキーパーがいた。僕はボールを蹴り込んだ。キーパーは扉を閉めてブロックした。そして扉に内側から鍵をかける。ずるいじゃないか。 ...
2024/05/04 02:24
石窯
石窯の中にいるようだ。君はこの暑さを屋根にある太陽光発電パネルのせいにする。少しでも涼しい部屋を探して家中移動する。 「屋根、外しちゃいなさいよ」 苛立ちわめく。「‥‥早く」 僕は脱水を終えた洗濯物を山ほど抱えている。どこにも干す場所がない。仕方なく書斎の机の上に置くと「ジュッ」という音がした。一瞬で乾いてしまった。 ...
2024/05/04 02:22
バク転
「身だしなみの基本はドライヤーです」とその講師は言う。 「ドライヤー、持ってない人いますか?」 そこにいた5人の内、3人は持ってなかった。 「残念ですがあなたがたには私の講義を受ける資格はありません」 さて残ったのは僕と髪の長い美人だ(彼女は元体操選手だという)。身だしなみの講師が彼女と僕をジロジロ見比べて言う。 「あなた、本当にドライヤーを持ってるんですか?」 ...
2024/05/04 02:20
宿題
「AVの方が稼げるよ」と私は友達に言う。 私はAV女優で、彼女はソープ嬢だ。アイスを食べている。 「私よりアンタの方が金持ちなの?」「かもね」「じゃアイスもう1個奢ってよ」 彼女の宿題を私が代わりにやった。昼から始めて、結局徹夜した。終ったころには、私は熱を出していた。服を着たまま、ベッドに倒れ込んだ。 大汗をかいて、目を覚ました。何時間眠ったのか、わからない。汗で濡...
2024/05/02 02:12
サッカー部
僕たちサッカー部員の前に神様があらわれて、こう言った、「明日のサッカーの試合を試合を晴れにしてやろう。だがその代わりお前らの誕生日は雨になる」 試合や誕生日が雨になったところでどうということはない、みんなはそう考えた。しかし僕の誕生日は七夕なのだ。 ...
2024/05/02 02:11
逃走中
パンを盗み食いする。パンは2種類ある。固いパン、柔らかいパン。僕は迷った末、固いパンから食べ始める。誰もいない、暗い部屋だ。固いのを食べ終えたところで、部屋を出た。柔らかいパンは逃走中に、歩きながら、あるいは文字通り走りながら食べようと思ったのだが、正解だった。 階段を下りていく。段には靴が置いてある。僕は靴を履いてなかったので、どれか一足頂こうと思った。紐を結ぶタイプより、ローファー...
2024/05/02 02:09
切符
僕は16時に出るバスの切符を持っている。毎日その時刻にバス停へ行く。そしてバスには乗らない。家に帰る。 次のバスは16時50分。そのバスが来るのを待ち、バスがやって来るのを見て家に帰る。 乗車券売り場の人は不思議がった。なぜ乗りもしないバスの切符を買うんだい、それも毎日? 僕は答えようとしてやめる。 ...
2024/04/30 21:43
観戦
地方のスタジアムで、ルールのよくわからないスポーツの試合を僕は観ている。 とりあえず、青いユニフォームを着た選手の応援をすることにした。(ちなみに選手は数え切れないくらいいて、みんな違う色のユニフォームを着ている。) 観客席で撮った自撮り写真を友達に送り、これって何の試合なんだろうねとついでに訊く。 ...
2024/04/29 15:49
溶けたチョコ
ディーラーの握り拳の中に4つの数字がある。サイコロを転がして出した数字とは一致しない。友人たちはまた全部外した。 「いつかこれで大金を手にするんだ」いつも言っている、ギャンブル好きの彼ら。 もう帰ろう‥‥ 車に戻った。友人の1人が私と2人だけで話したいと言った。異議を唱えるもう1人の友人を、彼は殴って黙らせた。殴られた方はなぜか楽しそうに笑って‥‥ ‥‥ 「話っ...
2024/04/29 01:16
バス代
バスを降りるときに3200万円を支払うのだ。僕じゃない。僕の友達が。彼はそんな金は持ってない。支払いは待ってやってくれ、と僕も運転手に頼む。 運転手は何も言わず、ずっとバスは停車したまま。 ...
2024/04/27 15:08
地下
地下のそのスペースにたくさんの人が集まっている。みんな友人だがもう誰が誰だか思い出せない。ある音楽が演奏されたのだった。その音楽は僕たちの記憶を洗い流していった。‥‥帰ろうかと思うが足が動かない。ここがどこなのかすらわからない。何か重大な目的があって僕たちはそこに集まったのだった‥‥ 会場の出口では記憶が売りに出されている。それは1点ずつ違うCDだったり紙の本だったりする。映像データで...
2024/04/27 15:06
宝くじ
知らぬ間に宝くじが当たったようだ。きっとオンラインで買ったやつだ。大金が口座に振り込まれている。僕はその金を全部引き出し、宝くじ売り場へ向かい、そこで売られている宝くじを全部買う。そこで気づいたことがあるのだが、1億円分の宝くじの束は、1億円の札束より軽い。 ...
2024/04/25 23:49
巨大化
町の上空に浮かぶ雲のベッドで僕は目覚めた。寝ているうちにまた巨大化してしまったようだ。ベッドから足を下ろすとき住宅を一棟踏み潰してしまった。 いつまで寝ぼけているんだ、と町の住人から怒りの声が上がる。 ベッド下に落したティッシュの箱を取ろうとして暴れ回り、町の一区画を更地にしてしまったところで、完全に目を覚ました。 ...
2024/04/24 15:19
東大生
東大生とは、東京大学の学生ではなくて、東京大学に連れていってくれる人のことだと、その人は主張し、5月のある日、東大を案内してくれたのだ。 東大は東京の大学というより寺院のようで、建物の中に入るとき、靴を脱がなければならなかった。 その日は休みなのか、構内に学生や教員の姿はなく、静かだった。 犬小屋があって、そこで白い犬が寝ていた。 ...
2024/04/24 14:55
右ハンドル
右側通行の道路、右ハンドルの日本車とすれ違った。赤いスポーツカー。運転していた女性が歩道の僕に手を振った。僕も振り返すと、それを合図に人が集まってきた。日本語が通じるか挑戦したい、という人たちだ。日本語を学んでいる学生たちだった。 ...
2024/04/23 14:42
大猫
その家の玄関の前には大猫がいて、カメラを構えた僕が近寄ると後ずさった。そうか写真に撮られるのが嫌いなんだ。家に入るのに大猫が邪魔だった。どうすればどいてくれるだろうと思っていた。無事追い払うことができた。 ...
2024/04/23 14:22
L字型
夕日を浴びて電車が走っている。電車には人は乗ってない。ジャガイモが積まれている。収穫したばかりのジャガイモだ。 線路はあるところで直角に曲がっている。電車はそこを上手く曲がれず、脱線してまっすぐに行ってしまう。まっすぐ行った先には車庫がある。まだ車庫に入りたくない、と電車は思う。 ...
2024/04/23 14:16
雑巾
陰茎は固く絞られた雑巾のようだった。僕だけじゃなくみんなのがそうなっている。ニュースでやっていた。みんなそうなってしまったなら仕方ない。 小便をするときはそれをさらにきつく絞る。残尿感があるならまだ絞れるってことだ。 ...
2024/04/23 14:07
アラーキー
この写真家を僕はアラーキーという仮名で呼ぶことにする。つまり僕が拾ったのは普通のエロ本・エロ写真集ではなかったのである。後で見てわかったが、それはあるストーカーの日記だった。彼(おそらく男だろう)は複数の女性を追いかけていて、隠し撮りした写真の他に、標的の女性の利用するバスの時刻表や、訪れるカフェのメニューなども参考資料としてあり、その本を持っているのが僕は怖くなった。 ...
2024/04/23 14:06
平行世界
アイマスクの代わりに黒いタオルを巻いて寝ていた。電車の中だ。電車が駅に着いた。慌てて飛び起き、降車した。目的の駅の、1つ前だった‥‥ やってしまった‥‥降りたホームで、次の電車を待った。それはすぐ来た。先行する電車に追いつき、しばらく平行して走る。向こうの乗客たちが、僕に手を振っている。 ...
2024/04/22 14:30
高速道路
高速道路を僕は歩いている。険しい山を削ってつくられた道だ。時速300キロで走る透明な車が、僕の体を通り抜ける(逆なのかも知れないが、透明なのは僕の方で)。 路肩に男の子がいる。1人で遊んでいる。危険だ。僕は声をかけた。 親に電話してやるよ、迎えに来いって言ってあげる。 おうちの電話番号、覚えてる? 迷子の男の子が教えてくれた番号にかけると、それは僕の実家だ。死んだはず...
2024/04/21 21:58
酒瓶
足元に酒瓶があった。隣のテーブルの方に蹴飛ばした。赤い酒が入っていた。僕は酒を飲まない。 隣りのテーブルで飲み食いしていたグループが僕に手を振って挨拶したのを見て席を立った。 店の外に出ると明るかった。朝だ。カネを払わずに出たことを思い出した。 僕はいろんなことを忘れていた。椅子の背には上着をかけたままだった。上着の内ポケットには財布が入っていた。 ...
2024/04/21 21:55
13歳の心臓
僕は窓際に追いつめられた。窓から外に逃げようと思った。 しかし窓には鉄格子が嵌めてあった。 そいつは僕の体の中から「13歳の心臓」を抜き取ろうとした。 取っても死にはしないとそいつは言うが‥‥そもそも「13歳の心臓」って何だ? ...
2024/04/21 21:54
相思相愛
愛する女に初めてキスしようとしたとき、私は自分が女になっていることに気がついた。 私がキスをすればこの女は男になるのだろうか、と考えながらキスした。目は閉じなかった。女の変化を観察していたが、何も起こらなかった。相思相愛の私たちの未来が、少し不安になった。 ...
2024/04/21 21:53
レンタカー
女が「レストラン」と言っている。それを聞いた男が「レンタカー?」と返す。「レストラン」大声。「何借りるの?」さらに大声。「レンタルビデオ?」日本人の観光客だ、地下鉄の中。僕は用もない次の駅で降りる。 ...
2024/04/21 21:51
怪獣
怪獣の背中に生えているような刺が、道路に生えていた。車は走れなくなった。ある日突然のことだった。僕は茫然と見つめた。 刺は完全な等間隔で生えていた。人工物には見えなかったが、自然の物とも思えなかった。僕はスマホを覗き込み、世界を裏で牛耳る悪の組織の陰謀ではないかという説が、狂人たちの口から、説得力をもって語られるのを待った。 ...
2024/04/21 21:50
知識
ポケットから取り出した紙片、4つに折られていたのを開いて、約3分間、お湯に浸すのだ。 書かれていた文字が、お湯に溶け出して、紙が真っ白になったら、取り出すのだ。 文字が溶けたお湯を、僕は飲むのだ。知識が僕のものになる。 ...
2024/04/21 21:49
受話器
電話は、黒いダイヤル式の電話だった。ネットに投稿した僕のエッセイを読んだという人から、電話がかかってきた。「嬉しいよ」と言う、その声は知らない、若い男のものだった。たしかに嬉しそうな声であった。 「何が嬉しいの?」僕の返事にも、相手は愉快そうに笑った。その笑い声が僕を不安にさせる中、手にした受話器が、重くなったり、軽くなったりした。この自分の手にしているものは、いったい何なのだろうと僕は...
2024/04/21 21:48
富豪
地下鉄の車内で、ピンク色のルーズソックスを履いた黒人の女のコが僕を見つめている。目がハートになっている。こんなハンサムな人は見たことがない、とその目は語っている。 「私と結婚して」と目は言う。 「私は大富豪の娘よ」 大富豪は次の駅で降りる。僕は降りない。大富豪の座っていた席に別の女性が座る。こんなに美しい女性は見たことがない。 ...
2024/04/21 21:47
門
長い石段を上がりきると「門」だった。「門」にやってきた。旅の目的地だ。スマホをもういちど見た。 スマホによると、僕は90%の確率で「答え」を見つけることになっているのだ、その門のところで。 さらに10%の確率で「新しい自分」に出会えるという。 ...
2024/04/21 21:46
1枚の紙
手作りのバッグを君は持ってきて僕を旅に誘う。 人生で必要なものは全部入っていると、バッグを開け、中身を見せてくれる。ハサミがない、と僕は思った。 ハサミを何に使うの? うーんとね、切るんだ 旅先に切れるものはないの そうか残念‥‥ それじゃ今のうちに、と僕は思って、紙を切り始めた。僕は紙を1枚しか持ってなかった。切ることによってそれは2枚になり、3枚になった。...
2024/04/21 21:45
殺し屋
女の殺し屋が銃を構え、こちらに向ってゆっくりと歩いてくる。対する僕たちは5人だった。こちらも銃の狙いをつけ、殺し屋の前に立ちはだかった。けれど殺し屋がゼロ距離にまで近づいても、僕たちは撃てなかった。 殺し屋も発砲せず、僕たちの体の中を通り過ぎた。仲間たちは膝から崩れ落ち、二度と立ち上がれなくなった。僕は怖くなり、自分の体から逃げ出そうとした。あぁ、それには成功した。 ...
2024/04/10 15:52
バンビ
家が鹿を産んだ。2匹の子鹿。おぎゃーおぎゃーと泣く子鹿たちを、僕は飼いたいと思った。しかしママは言った、森に捨ててきなさい。 森? さもなくばレストランに売るわ。野生の動物を飼育することは禁じられています。 ママは僕の目の前で家を蹴飛ばして不妊にした。この家がメスだなんて知らなかった。ママたちはあの不動産屋に騙されていたの。 ...
2024/04/10 15:45
顔写真
パスポートを開いた。僕の顔写真は剥がれていた。パスポートを入れておいたファイルの中に、それは落ちていた。たくさんの顔写真、けれどどれも僕の顔ではない。性別も、年齢も、人種もさまざまな顔、顔。 飛行機に乗る。空港へ向うバスの中だった。今から再発行してもらう時間はない。僕は僕にいちばんよく似た写真を選んだ。それは少女の顔だったが仕方ない。少女が僕を笑っていた。 ...
2024/04/09 01:06
白く暖かい
目を開けると真っ暗だった。何も見えなかった。目を閉じると明るかった。見えないのは変わらなかったが、僕は目を閉じたままでいた。白く暖かい光を感じた。それはしかし目を開けると消えてしまうのだった。 ...
2024/04/08 21:41
オフィーリア
足元にオフィーリアを思わせる水死体が流れてきた。その死体は目を開けていた。僕は手を伸ばして、彼女の瞼を下ろそうとした。死体は硬直していて難しかったが、何とかやりとげた。 大雨が降った。町が水浸しになった。車道と歩道の高さは同じだったが、水は車道だけを流れた。そこが川のようになり、いろんなものが流れてきたのである。美しい水死体、美しくない死体。陸地を歩くより、水に流されていった方が早そう...
2024/04/08 21:40
泥棒
周囲にいるたくさんの人、僕を取り囲んでいるわけではないが。みんなとても背が高くてハンサムだ。消えろ、と僕は心の中で呪文を唱えた。 1人ひとり消えていく。彼らは消える直前にさらに美しくなった。そして眩い光を放ちながら消えた。僕はそれがおもしろくなかったので、「泥棒!」と声に出して言った。 ...
2024/04/07 16:09
シラケ鳥
レストランの中を1周する。空席が1つだけある。どう考えてもそこが僕の席だ。僕は座った。隣の席の男が酒を勧めてくる。 僕は飲めないと断った。酒が飲めないのか? そうです、と僕は言う。 ちょっと頭のおかしそうなふりで、男を相手に「ここはどこ、わたしはだれ」をやる。白けかけた場が元通りになる。 ...
2024/04/06 14:38
影
さて時間が来て駅に列車が到着したのだけど、僕たちは動かずにいる。 僕たちが立ち去るのではなく、僕たちの影がこの場を立ち去るのを見ていた。 ...
2024/04/06 14:24
だれ
ちょっと頭のおかしそうな人が僕に顔を近づけて、「ここはどこ、わたしはだれ」をしてくる。 僕は自分のいる場所を答え、僕から見てあなたはどういう人なのかを話した。 ...
2024/04/06 14:23
目薬
ヘアスタイルをチェックしたかっただけなのに。その鏡は大きすぎた。僕は小さすぎて映らなかった。鏡は遠い夜空だけを映していた。満天の星空。目薬のように雨が一粒だけ落ちてきて、鏡の前に立つ僕の髪を濡らした。 ...
2024/04/05 16:40
2階から目薬
屋根の上のアンテナは、宇宙からの音波を受信している。 その夜、宇宙は「2階から目薬」と言うメッセージを送った。 すると空から落ちてきた一滴の雨粒が、アンテナの中に‥‥ ...
2024/04/04 15:54
夢占い師
2階には80歳の夢占い師がいた。彼女はベッドにうつ伏せになって寝ていた。僕は彼女に自分の夢を話した。それは僕が夢占い師をやっているという夢だ。 「僕はあなたのようにうつ伏せで寝たりはしない。仰向けで寝る。目を開けたまま寝るんだ。僕には瞼がないからね」 黒い布が顔の上に置かれている。光を遮るために必要だ。 ...
2024/04/04 15:46
回答
僕たちは短冊に「回答」を書いて、丸いテーブルの上に置く。 僕のすぐ後ろの人が「回答」を置こうとすると、係官が「間違った答えを置くな」と注意した。 読む前からわかるんだな‥‥ 後ろの人は訊いた、「間違った回答はどこに置けばいいの?」 それはどこにも置いてはならない。 僕たちの服にはポケットがなかったから、ずっと自分の手に持っているしかない。 ...
2024/04/04 15:44
金貨
4人の少女と一緒に1人のイケメン(生きたイケメン)を土に埋めた。そんなことをしていたら終電を逃してしまった。僕はポケットの中の金貨を取り出し2つに割った。大きい方のカケラを少女たちに渡してタクシーに乗るように言った。 やってきたタクシーの運転手はさっきのイケメンよりさらにハンサムだった。少女たちは僕を振り返り、(騙された)というような変な赤い顔をした。 ...
2024/04/03 14:46
差別
みかんが1個1500円だった。スーパーの店主が嘆いていた。誰もみかんを買わない。僕は買うよ、と言った。その高価なみかんを。店頭にある全部。すると店主は僕を罵倒した。差別的な言葉を使って。みかんキチガイとか何とか。それは罵倒だったと思う。 ...
2024/04/03 02:49
盲目
ピンク色の絨毯ではなかった。桜の花びらだ。でもその女の人は目が見えない。僕の隣をすたすたと歩いて行く。着いた。 歌手はその女の人の母親で、やはり盲目だった。そんな気はしていた。僕はステージの彼女の隣に立って、口パクをする。けれど観客も全員盲目だったから、僕のしたことに何の意味があったのかわからない。 ...
2024/04/02 15:24
口で言う
車がシャーッシャーッと叫びながら道を走っている。 雨に濡れた路面を走るときそういう音がするのではなくて車が口で言っているのだ。 プロボクサーのパンチと同じ‥‥あれもシュッシュッと風切り音がするわけではなくて口で言っているのだ。 今日はそんなことが気になる。 ...
2024/04/01 22:34
最終巻
そのコの部屋で全巻揃ってないマンガを見ていた。どのタイトルも最終巻だけがない。それはわざとだと思う。 居間には彼女のお姉さんたちがいて、あのコとつき合うのなんかやめなさいよとしきりに言うが、僕は返事をしない。 ...
2024/04/01 22:32
真実
さて時間が来て駅に列車が到着したのだけど、僕たちは動かずにいる。 僕たちが立ち去るのではなく、僕たちの影がこの場を立ち去るのを見ている。 ちょっと頭のおかしそうな人が僕に顔を近づけ、「ここはどこ、わたしはだれ」をしてくるのを許そう。 君が自分のいる場所を答え、君から見た彼女はどういう人なのかを話すから。 ...
2024/04/01 22:23
ジェットコースター
寝てるときお腹が痛くなって目が覚めた。僕はジェットコースターに乗る夢を見ていた。ちょうど乗り込むところだった。そのときにお腹が痛くなった。 「あなた妊娠してるじゃないですか!」と係員は言った。「妊婦さんは乗れませんよ」 そこで目が覚めたのだ。僕はうつ伏せになって寝ていた。ベッドではなかった。枕元に誰かいた。「妊婦さんはうつ伏せで寝てはいけません」とその人は言った。 ...
2024/03/28 15:45
歌曲
台車に乗っていくことにした。制服を着た係員が押してくれる。僕は荷物のように運ばれていった。貨物用の巨大なエレベーターに乗って陸に上がった。 昨日の夢にも出てきた、とんがり帽子の少女が僕を待っていた。下着が見えるのも構わず地べたに座っている。そして聞いたことのない歌曲を口ずさんでいる。 「シューベルトとどっちが好き?」と訊いてくる、その少女が係員にチップを渡した。 ...
2024/03/27 16:20
水平
占い師は80歳の老婆だ。僕は頭を垂れた。だがその御神託を聞くのには体全体を地面と水平にしなければならない。床には布団が敷いてあり、僕は身を横たえた。しかし「顔をシーツにつけてはならない」、ほんの少しだけ顔を上げなければならなかった。 ...
2024/03/26 16:16
10円玉
1円玉が何枚か落ちているのはスルーした。しかし10円玉は無視できなかった。僕はそれを拾い、女の子に渡した。女の子は魔女のようなとんがり帽子をかぶっていて、裸足だ。女の子の手に10円玉を握らせた。だが女の子は足をまっすぐ伸ばして地べたに座ったまま、身動きしなかった。 ...
織田信長
僕はしばらく1人で待った。彼女は織田信長の手を引いてその先まで送っていった。彼女と僕は裸足だった。そこに着くまでに鋭く尖った石を何度も踏んだ。きっと足の裏は血だらけだろう。信長だけが草履を履いていた。しかし信長は裸だった。体には無数の赤い切り傷があった。 ...
2024/03/26 16:15
シザーハンド
ゼリーを食べていると男の先輩が来て言った。「バラの世話をする時間だ」 僕はゼリーを急いで食べ先輩の後を追った。 庭には椿か牡丹のようにバラの花が落ちている‥‥ 先輩は手に持った鋏を何もない空中にかざした。 すると空からバラの花が降ってきた。まるでヒョウのように。「本降りだ」と先輩は言った。僕は傘を先輩に差しかけた。 ...
2024/03/25 16:24
見舞い
僕はベッドに寝ていた。病院のベッドだったが体調は全然悪くない。僕は健康である。 女のコが1人見舞い(?)に来ていた。彼女は僕の頬にキスして去って行った。 毎日目が覚めるとそんなことが起きた。 ベッドに寝ている〜また別の女のコがいる〜彼女は僕の頬にキスして去る。 だがついに事態は変化した。ベッドには僕ではなく女のコが寝ていた。病気で入院しているのだ。 僕は彼女の頬...
2024/03/25 16:05
多言語話者
多言語を喋れる女生徒が、先生の代わりに授業をした。いろんな国の言葉で、簡単な自己紹介の挨拶をする。彼女が日本語を喋れるのを聞いて、僕は驚いた。この教室で日本語ができるのは、僕1人だと思っていた。 「今の、日本語でしょ?」と、隣の席の、クラス1番の美少女が、僕に話しかけてきた。そのコに話しかけられたのが嬉しかった。教壇の女生徒の日本語の挨拶を、そのコに繰り返した。教壇の女生徒は笑っている。...
2024/03/25 05:44
置き去り
休憩で立ち寄った食堂の中で僕は眠ってしまった。その間にバスは出てしまった。友人たちはどうして起こしてくれなかったのだろう。その時点では自分がわざと置き去りにされたことに気づかなかった。僕はイジメられていたのだった。 ポケットの中に映画の前売チケットがあった。この映画を観るためにバスに乗ったのだ。朝だった。食堂には誰もいない。僕は店を出て走った。全力疾走すればバスに追いつけるような気がし...
2024/03/25 05:42
クローゼット
僕の服は僕の部屋にはなかった。隣の部屋にあった、そこには見知らぬ女が住んでいて、なかなか服を取りに行くことができなかった。 部屋に自分の服を取りに行くときには、いつも女の母親と一緒に行った。母親は茶色の大きな封筒を持って行く。 中身はわからない。中身なんかないのかも知れない。 その封筒を女が受け取ったのを見て、僕は部屋の中にある自分の服を探すのだ。 「たしかこの...
2024/03/24 05:38
玉手箱
僕が浦島太郎のように亀を助けたと嘘をつきまくっていると竜宮城からお迎えが来た。「本当に助けたんだな」とみんなは言った。「嘘だと思っていたよ」 だが竜宮城の人たちは知っていたのだ。僕は半ば拉致された形だった。「許してください」と請う。「もう嘘はつきません、解放してください」 僕は例の箱を持たされて解放された。帰ったら必ずこの箱を開けろと言われて。もし開けなかったらひどいこと...
2024/03/23 16:04
空港にて
広大な空港の中を走るバスにもう何時間も乗っている。僕は席には着かずに立ったままずっとスマホをいじっていた。席は空いていて運転手も乗客も座るように勧めたが僕は聞かなかった。 いくら広いとは言っても空港だしこんな何時間も乗っているとは思わなかったからだ。やっと到着した。 しかし僕の乗る飛行機の出発時刻はとうの昔に過ぎていた。だめもとでカウンターに行って払い戻しを受けられるか訊いてみよ...
2024/03/23 15:43
暗殺
その絵に描かれていた鳥は動いた。 「目がおかしくなったのかと思った」と僕は言ったが、「本当に動いているのよ」と彼女が答えたので安心した。 鳥は絵の中から飛び出すと巨大な蚊になった。ドローンのように飛び回っていたがやがて僕の腕に止まった。 「これに刺されたらどうなるの?」と僕は不安になって訊いた‥‥ 「血がなくなって死ぬよ」 「でも刺したりはしないんだよね?」 「私、...
2024/03/22 16:06
散歩
僕は持ち歩いていた鏡に、常に自分を映して見ていた。見ていないと僕は消えてしまうからだ。しかしふっと目を逸らしてしまった。僕は消えて、隣に若い男が現れた。それは若いころの僕だった。その隣には醜い老人がいた。老人は四つん這いになり、犬のように首にリードをつけられていた。 若いころの僕がそんなふうに老人を散歩させているのだとわかり、僕は僕を憎んだ。その老人と消えてしまった僕とは年は幾つも違わ...
2024/03/22 03:39
床屋
僕の髪は、だんだん短くなっていった。せっかく伸ばした髪なのに。 それに気づいた友人の1人が、「そうか、死んだんだな」と言った。「死ぬと、髪は短くなっていくんだよ」 「爪もそうだ。切ってもないのに、短くなる。これ以上短くならないところまでいったら、そこで本当に死ぬ」 「まだ死にたくない」 「葬式をやってやる。成仏しろよ」 彼はそう言って、僕の頭をバリカンで刈った。ヒゲを...
2024/03/22 02:28
貸して
目のない女がいた。彼女は僕を見つめていた。どうしてそんなことができるのだろう。僕は混乱したまま彼女に近づき、話しかけた。「えっと、1万ウォン貸してくれって言ったら驚くかな?」 「全然」と目のない女は答えた。 「えっと、僕は驚いているんだよ。えっと‥‥」 「何に?」 「えっと、それは言えない」よく見ると彼女には口もなかった。 「ムカつく」彼女はそう言って僕の首を締めた。 ...
2024/03/22 01:10
土手
海外で賞を獲った話題の映画を観るために、僕たちは並んだ。列は、映画館の外の、土手にまでできていた。そこに、有名な映画監督の、A氏の姿が見えた。「こんなところに‥‥」と僕は言った。独り言のつもりだったが、驚いたせいで、大声になってしまった。 「試写会に、招待してもらえなかったんですか?」僕は、声をかけた。「落ちぶれたもんでな」A氏は答えた。それで周囲の人々も、A氏に気づいたのだ。A氏は、彼...
2024/03/21 19:16
かごめ
この学校の女生徒には全員片足がない。男子生徒は僕しかいなかった。先生は耳の聞こえない年寄りのゾウガメだ。 今日先生が持ってきたカゴの底に、魚が一匹残っていた。切り身の魚だったが、ピチピチ跳ねている。僕はそれを先生に見せようと思ったが、先生はもういなかった。授業は終ったのだ。 女生徒はフラミンゴのように立ち、僕の前で義足を外し、足の付け根を掻く。学校にはその女生徒以外、誰も残ってな...
2024/03/21 03:35
炊飯器
窓辺に炊飯器があった。ご飯が炊きあがっている。僕はそれを手でつかみ取り、窓の下の貧しい人たちに投げてやる。彼らは僕に気づかない。窓をそっと閉める。外は雨だ。 昼食の時間だった。僕は1人で食べるつもりだったが、裸の名前を知らない少年が僕の隣に座った。その子には体毛が全然なく、肌の色も真っ白だった。そのせいで年齢不詳だった。 ...
2024/03/19 16:00
ピラミッド
ピラミッドが崩れる。四角い大きな岩は消えてなくなる。数千年の時が流れた。 その跡地には丸い窓を持ったビルが建つ。ビルに出入口はない。窓は開かない。 ...
2024/03/19 02:44
録音
知られてないことだが、白黒のフィルムには音声が録音できるのだ。36枚撮りのフィルムに、およそ1時間の録音ができる。撮り終えたフィルムを、手動で、1時間かけて、ゆっくりと巻き戻す。そうすると、逆回しになった音声が聞こえてくる。現像するとその音声は消えてしまう。 ...
軽トラ
その軽トラはライトを点けたまま歩道に駐車していた。エンジンはかかってなかった。鍵はつけっぱなしだ。すぐにバッテリーがあがってしまうだろう。僕はライトを消そうと車内に乗り込んだ。決して車を盗むつもりではなかった。 若い母親の運転する車が後ろからついてきた。大きなペットショップの駐車場から出てきた車だ。助手席に小さな女の子が座って、何やらでたらめな歌を歌っている。ノロノロと走る僕を追い越し...
2024/03/18 06:09
落とし主
床にたくさんのガラケーが落ちていた。僕は全部拾った。バスの車内だった。「落しましたか?」と乗客1人ひとりに声をかけて回った。しかし落とし主は見つからなかった。 バスが停まった。その停留所で全員が降りた。もう誰も乗ってこなかった。僕は何台ものガラケーを抱えて、このバスはどこまで行くのだろう、と思っていた。 ...
2024/03/16 15:54
カラオケルーム
僕が遅れて到着すると、みんなはもう食べ終えていた。予約していたレストランだった。奥に防音のカラオケルームがあった。何人かの仲間とそこへ移動した。食事は温め直してもらって、歌いながら取ることにした。 日本語の歌を探した。日本の歌はけっこうあったが、どれも歌詞が韓国語になっていた。僕はオリジナルの歌詞で歌おうとしたが、歌詞を忘れていた。 ...
2024/03/16 15:52
黒いマント
例えば医者は医者と、消防士は消防士といった具合に、同じ職業の人としか結婚してはいけないという法律である。生まれてきた子供も同じ職業に就かなくてはならない。違反者には高額の罰金が課せられる。そういう法律があるんだよ、と彼らは言った。 黒いマントを羽織った偉い人と、その人のクローンが。彼らは結婚していた。そういうのが流行っていた。僕もいつか、いつか自分のクローンと結婚するのだ。 ...
2024/03/16 01:22
濡れた靴下
僕は靴下を履いたまま風呂に入っていた。体を洗うとき靴下を濡らさないようにするのが大変だった。それで長風呂になってしまったのだ。2時間は入っていたと思う。 やっと風呂から上がった。女房が待っていた。彼女は僕の靴下に触れて「濡れているじゃない!」と非難した。「汗をかいたんだよ」と僕は言い返した。僕は靴下を脱ぎ、洗濯機の中へ放り込んだ。 ...
2024/03/15 14:35
鼻クソ
音の塊を撮影しようとしているカメラマンがいる。しかし上手くいかないので僕に頼む。その塊をスタジオの中に入れてくれと。外だからだめなんだ。 僕は音の塊をつかまえる。塊は鼻クソのように小さい。しかしどうして鼻クソを思い浮かべてしまったのだろう。 音の塊は目に見えないし匂いもないが、ばっちいもののように思えてきた。 ...
2024/03/14 17:08
熱中したもの
食料品店で絵画が売られている。タイトルは「熱中したもの」。2割引のシールが貼られて、食品と一緒に。 消費期限を見てみた。明日までだった。 何が描かれた絵なのだろう。僕には何も見えない。熱中したもの。 ‥‥僕が熱中したもの。 ...
2024/03/14 17:07
セールスマン
ドアを開けるとセールスマンがいた。笑わない男のセールスマンが1人、ただ突っ立っていた。僕は鍵をかけず、そのまま出かけた。セールスマンは部屋の中に入るか、ためらっていた。 部屋にはとても大勢の人。話し声が、廊下に漏れてくる。血縁関係はないが、僕は彼らと一緒に住んでいた。マンションの、高い階にある、広いワンルームだ。 ...
2024/03/13 01:21
体操服
引率の先生はもう来ている。生徒たちも制服のワイシャツを着て待っている。僕は何も着てなかったので、みんなが僕の周りで輪になって、通行人の目から僕を隠した。 そのようにして学校まで行った。1時間目は体育だった。みんなのロッカーには体操服が入っていた。みんなは下着まで全部着替えた。 僕のロッカーには体操服もなかった。その代わりアイスクリームが入っていた。僕はそれを食べ始める。半分ほど食...
2024/03/11 15:34
電気屋
電気屋に来た。家のテレビが壊れたのだ。これを期に薄型テレビに買い替えてもいいかも知れない。 しかしその店にはブラウン管テレビしかなかった。薄型の液晶はないんですか? 僕がそう訊くと、店主は小さな鍵を僕に渡した。それは寝室の鍵だった。ドアを開ける。僕の寝室だ。中に2台の薄型テレビが設置してある。値札はついたままだ。 ...
2024/03/11 14:53
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